経営スキル|思い通りにコトが進まない中小企業の共通点

この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。約 13 分で読めます。


HORII
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おはようございます!

2025年第9週土曜日。

ガラリと季節が変わったように暖かい1週間でしたが、公私ともに順調に過ごせましたか?

予定通り、想定通り、思った通りに過ごせたでしょうか?

残念ながら、予定が狂ったり、想定外が起きたり、思うように過ごせなかった方もいらっしゃるかもしれません・・・ということで、今週は、そんな 「思い通りにコトが進まないのはなぜか?」 を整理し、その理由を探ります。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に、「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このブログについて」をまずご覧ください。

【イントロ】
「思い通り」と「計画通り」

「思い通りにコトが進まない」ことの本質に迫るにあたり、「思い通り」という言葉について整理しておきます。

例えば、計画や目標を意識しなくても、あるいは、それがあってもなくても、人は、物事を進める過程や、その結果について「思い通りかどうか?」をよく感じます。

この「思い」の多くは、期待や想定であり、これは無意識のうちに「計画」や「目標」の起点になっています。

例えば、経営計画や利益目標のような「カタチ」がなくても、「順調に経営したい」「もっと儲けたい」という漠然とした「思い」があります。

したがって、「思い通りにコトが進む」とは、広い意味で「計画通りに実行できた」や「目標や目的が達成できた」と言い換えることができます。

仮に「思い通りにコトが進まなかった」としても、それは何らかの期待や想定をしていたからです。

これは、はっきりとした計画や目標を立てていなくても、その兆しや「タネ・ネタ」がすでにあったことを示していると言えます。

【課題共有】
思い通りにコトが進まない

程度の差はあれ、経営者は「思い通りにコトが進まない」ことへのストレスを日々感じてます。

  • 売上が「思い」を下回っている
  • 人材の成長が「思い」を下回ってる
  • プロジェクトの進行が「思い」を下回っている
  • 課題解決が「思い」のとおりに進まない
  • 資金繰りが「思い」のとおりにならない

あなたは、どうですか?心当たりはありますか?すでにストレスフルではありませんか?

もし、どれにも該当せず「すべて思い通りに進んでいる!」という経営者がいるなら、それは「課題に鈍感なだけやん」と私は思っていますが、(さすがに叱られるかな?・・・というより)そのような経営者なら、少なくともこのブログは読んでないですよね(笑)。

【基本原理】
計画達成のフレームワーク

思い通りにコトが進まないとき、つまり、思ってた流れや結果とは違うとき、まずは「基本に立ち返ること」が、とても重要です。

その基本とは「計画達成のフレームワーク」です。

(正しい計画)×(正しい行動)=(計画達成)

シンプルですが、「正しい計画」を「正しく行動」すれば、計画は必ず達成するという基本原理です。

屁理屈のように聞こえるかもしれませんが、もっとも分かりやすいのは料理です。

「正しいレシピ」に沿って、「正しく調理」すれば、思い通りの一皿が完成します。でも、レシピが間違っていたり、手順を省いたりすると、美味しい料理にはなりませんよね?

「思い通りにコトが進まない」とストレスを感じた時は、一度落ち着いて(=意外とこれ大事)、このフレームワークに照らし合わせて下記の確認をしてみましょう。

計画は正しいか?

正しい計画の3要件(GSC)に照らし合わせてみます。

  • G:ゴール(Goal)は明確か?
  • S:ゴールに至るシナリオ(Scenario)は明確か?
  • C:各タスクの担当者は適切にキャスティング(Casting)されているか?

「思い通りにコトが進まない」ときの多くは、この3つの要件に不備があるときがほとんどです。

  • ゴールが曖昧
  • シナリオが曖昧
  • キャスティングが曖昧

このように、そもそも「計画が正しくないとき」に期待する結果が得られるはずはありません。

なぜ、計画が曖昧なのか?

それは「思い」が漠然としていて、言語化、数値化されていないからです。

例えるなら「ゴールは美味しいものを食べること」というような曖昧さです。

そもそも「美味しい焼肉」と「美味しいスイーツ」では、まったく違いますが、「ゴールはどっちなんだい?」とツッコみたくなります。

ゴールが曖昧だと、シナリオもキャスティングも白紙状態で、そもそも「計画」のテイをなしません。

また「美味しい焼肉がゴール」を明確に決めたとしても、そのためのリサーチや日程、予算などのシナリオがなければ、それを食べれる確率は高くありません。

さらに、美味しいゆえに人気店であれば、実現確率を高めるためには「予約」というキャスティングもマストです。

このように、「思い通りにコトを進める」ためには、「正しい計画」が必要であり、それは「漠然とした思い」を「GSC」の3つの要素で解像度を高めることに他なりません。

つまり「思い通りにコトが進まない」原因は、この「GSC」が曖昧さであると言えます。

行動は正しいか?

一方で「正しい行動」です。

幸い、上記のGSCを満たした「正しい計画」があるのに「思い通りにコトが進まない」原因は「行動」です。

つまり、

  • 行動が間違っている(やり方がズレている)
  • 行動がそもそも不足している(行動量が足りない)

の、どちらかです。

「正しい行動」とは、「正しい計画」で(C)キャスティングされた人たちが、(G)ゴールのために、(S)シナリオのとおりに動くことです。

また、チームにおいては、それをモニタリングし、「正しくない行動」を「正しい行動」に軌道修正するような仕組みやチームワークがとても重要です。

たとえばこんなケースが考えられます。

  • 営業計画を立てたのに、その通りに営業活動をしていない。
  • 採用計画を立てたのに、その通りに採用活動をしていない。
  • 日常業務においても、ルール通りの手順で動いてない。
  • 「モレはないか?」「ズレはないか?」のモニタリングをしていない。

どれも、「計画はあるのに、行動が伴っていない」典型例です。

まるで、「レシピがあるのに、それを無視して自己流で料理しているが如し」です。

(詳説記事)経営者の計画達成力:バックキャスト思考で目標は必ず達成

【振り返り】
心当たりチェックリスト

「正しい計画」や「正しい行動」ができない原因として、中小企業でよくある事例を下記にリストアップしました。

心当たりはありませんか?

経営者起因の
失敗要因

  • 正しくない計画
    • プロジェクトの途中で計画(GSC)を一方的に変更してしまった
    • Goal:プロジェクトの目的や期待値を明確に示していなかった
    • Scenario:複数のプロジェクトを同時に走らせたが、優先順位を明確にせず現場が混乱した
    • Scenario:現場の懸念に配慮せず強引な期日を設定した
    • Casting:必要な人員を十分確保しなかった
    • Casting:特定の個人に業務が集中した
    • Casting:スキルや経験が未熟な人材に任せてしまった
  • 正しくない行動
    • 十分なモニタリングをしていなかった
    • 現場からの報告を鵜呑みにしていた
    • 悪い意味で任せっきりにしていた
    • リーダーに権限を委譲したと言いながら、細かい判断まで介入し続けた
    • 部門間の対立を放置していた

プロジェクトリーダー起因の
失敗要因

  • 正しくない計画
    • Scenario:関係部門との調整が不十分であった
    • Scenario:作業内容を具体化せず、作業名だけでスケジューリングを行っていた
    • Casting:チーム内の役割分担があいまいで、責任の所在が不明確なまま進めてしまった
    • Casting:メンバーの能力や経験を考慮せず業務分担をしてしまった
  • 正しくない行動
    • 計画通りに進めなかった
    • 進捗状況の報告や共有を怠っていた
    • チーム内の不満や対立を放置してしまった
    • 小さなエラーを放置し、トラブルを大きくしてしまった
    • トラブル発生を予見できなかった

共通の失敗要因

  • 目的やゴールの認識を関連者で共有できていることを確認していなかった
  • リスクの洗い出しや事前対策が不十分なまま実行フェーズに入ってしまった
  • 関連者とのコミュニケーションが不足し、現状認識を共有していなかった
  • 「必ずゴールする!」というコミットメントが希薄だった。

【課題解決】
PDCAを軽視しないこと!

会社はプロジェクトの塊です。

短期間少人数の小さなプロジェクトもあれば、社運をかけたビッグプロジェクトもあるかもしれません。

また、プロジェクトを「目的や目標を持ってその達成や実現のために人が活動すること」と定義するならば、会社経営は、会社で最も大きいプロジェクトであり、それ以外は、すべてサブルーチンということもできるでしょう。

いずれにしても、ほとんどの仕事は、上記の計画達成のフレームワーク(正しい計画×正しい行動)が必要ですが、それとともに「PDCA」のフレームワークが欠かせません。

この両フレームワークは、下記のような関係にあります。

正しい計画正しい行動
PG:ゴール設定
S:シナリオの計画
C:キャスティングの計画
D計画の実行
C行動管理・進捗管理
A計画や行動の修正や改善

会社経営も含めて、社内のプロジェクトの成否はPDCAの良否で決まるといっても過言ではありません。

このPDCAは、もっともよく知られたフレームワークでありながら、実は、とても難易度の高いものです。

上記に示した、失敗事例のほとんどが、この「PDCA」を軽視している、あるいは、そもそも意識がないことが起因しています。

私見ですが、このド定番のPDCAが一般的すぎて多くの人が軽視しているのだと思います。

つまり、「思い通りにコトを進める」ためには、PDCAを学び、実践することが、実はもっとも効果的なのです。

次に、この「PDCA」を会社に定着させる実務を考えてみましょう。

【実践準備】
チームの秩序を正常化する

PDCAサイクルを回すのは「人」であり、「チーム」 です。

どれだけ素晴らしい計画を立てても、それを実行するチームが機能しなければ、計画は絵に描いた餅です。

「計画を達成するチーム」にするためには 「PDCAを回せるチーム」を作ることが不可欠であり、そのために必要なのが、「秩序の正常化」 です。

「チームの秩序を正常化」すれば、計画達成のフレームワークとPDCAが機能し、「思い通りにコトを進めるチーム」に成長することができます。

「秩序の正常化」とは?

正常な秩序とは、「組織としてのルールや役割が明確であり、それが守られている状態」を指します。

したがって、秩序が乱れると次のような問題が発生します。

  • 指示系統がバラバラ :誰が誰に指示を出すのか不明確で、混乱が生じる
  • 責任の所在が曖昧 :失敗した時の責任の押し付け合いが起こる
  • 情報共有が不足 :関係者に必要な情報が届かず、連携ミスが発生する

これでは、せっかくの計画が無駄になり、PDCAを回す以前の話になってしまいます。

チームの秩序を正常化する3つのステップ

では、どうすれば 「PDCAを回せるチーム」 になるか?です。

ポイントは 「ルール・責任・文化」 の3つを整えることです。

1)ルールを明確にする(ガバナンス)

まずは、チームが機能するための「基本ルール」を定めること です。

例えば、以下のようなルールを明確にするだけでも、チームの混乱は減ります。

  • 指示系統:指示命令、承認決済などの「タテのルール」
  • 情報共有:定例ミーティングや、ファイル保存など「共有のルール」
  • 公式書式:使用するフォーマットやファイルなど「書式のルール」

このようなルールが不明確な組織では、各人が「よかれ」と思って動いていても、チーム連携が悪く、結果として 計画の実行力が低下 します。

2)責任を明確にする(オーナーシップ)

次に大切なのが、「責任の所在をはっきりさせること」 です。

特に、以下の2つをルール化すると、責任の所在が明確になります

  • 役割と責任の明確化
    • 誰が何を担当するのか?
    • 誰がどの結果に責任を持つのか?
  • 権限と判断基準の設定
    • 誰がどこまで意思決定できるのか?
    • どこまで現場で判断できるのか?

「責任の所在が不明確な組織」では、言い換えれば「誰も責任を取らない組織」なので、どこか「他人事」なところがあり、トラブルが起きても「自分事」で捉えることが出来ず、最悪の場合、それが放置されることすらあります。

3)文化を整える(心理的安全性)

最後に、チームが「安心してPDCAを回せる文化」を作ること です。

どれだけルールを決め、責任を明確にしても、チーム内の関係性が悪いと実行力は高まりません。

そこで大切なのが、「心理的安全性」の確保です。

心理的安全性が低いと、「失敗を報告しづらい」「問題が表面化しない」「改善できない」「悪化する」 という悪循環が生じます。

  • 進捗の遅れや問題をすぐに報告できる環境を作る
  • 意見を言いやすい雰囲気を意識する
  • ミスを責めるのではなく、改善策を議論する

このように、セクショナリズムに陥ることなく、「お互いがフォローし合う文化」を作ること が、計画達成のための環境もとても重要です。

【実践実務】
リーダー用チェックリスト

次に、PDCAを回すときのリーダー用のチェックリスト(のサンプル)を紹介します。

正しくリーダーシップを発揮し「思い通りにコトを進める」ための参考にしてみてください。

Plan(計画)段階
チェックリスト

GOAL:目的・目標

  • プロジェクトの目的が具体的な文章で表現できている
  • 数値目標(KPI)が明確に設定されている
  • 成果基準が具体的に定義されている
  • 関係者の期待が言語化されている
  • 前提条件や制約条件が明確になっている

Scenario:シナリオ・スケジュール

  • タイムラインに余裕が持たせてある
  • 予算の見積もりが具体的な根拠に基づいている
  • 各プロセスは連続しており、断線していないことを確認した
  • リスクの影響度と発生確率が想定され、その対策が事前準備できている

Casting:キャスティング

  • 全メンバーが役割を理解していることを確認した
  • エスカレーションルートが明確になっている
  • コミュニケーションルールが共有されている
  • 定例会議など、情報共有のルールが共有されている
  • 報告・連絡・相談のルールが明確になっている

Do(実行)段階
チェックリスト

  • シナリオにしたがってチームは動いている
  • チーム内の雰囲気は良好である
  • 進捗状況を関連者と共有できている
  • 遅延タスクの原因が把握できている
  • メンバーの負荷状況を把握している
  • 関係者からのフィードバックが収集できている
  • 必要な意思決定が適時行われている
  • 手戻りが最小限に抑えられている

Check(評価)
段階チェックリスト

  • 計画と実績の差異原因を特定している
  • 発生した問題の本質的な原因を特している
  • KPIの達成状況が測定されている
  • コストの予実管理ができている
  • この先の進行を予見している
  • トラブルシューティングの有効性を評価している
  • プロセスの改善点が明確になっている
  • メンバーの成長度が確認できている
  • チーム内で振り返りが行われている

Act(改善)
段階チェックリスト

是正措置

  • 問題への対策が具体化できている
  • 改善策の効果を評価している
  • 標準プロセスの必要な見直しを行った
  • ゴールの修正は適切に行っている
  • シナリオの見直しは適切に行っている
  • キャスティングの見直しや再配置は適切に行っている
  • チーム内で改善策が共有されている

知見の蓄積

  • 成功要因が分析され文書化されている
  • 失敗から得た教訓が文書化されている
  • 次期プロジェクトへの提言がまとめられている

【要点整理】
PMの基礎をチームで学ぶ

さて、どうですか?

「思い通りにコトを進めるチーム」として成長するための要点を再掲すると次のとおりです。

さて、経営計画をはじめとして、プロジェクトを「思い通り」に進めるイメージはできましたか?

また、プロジェクトを通じて、チームのメンバーは成長しそうですか?

また、何より、経営者として、あなたのストレスは軽減できそうですか?

「思い通りにコトを進めるスキル」は、「プロジェクトマネジメントのスキル」に他なりません。

日常のルーティンワークであっても、必ず「ゴール」があり、その達成や実現のためのマネジメントは欠かせません。

会社経営もひとつの大きなプロジェクトであり「進め方」は同じです。

「思い通りに進まないコト」があれば、改めて「基礎スキル:計画達成力」と「経営スキル:プロジェクトマネジメント力」を見直し、改善を進めてください。

応急処置的に「個別の業務改善」を行っても、「スキル」を改善しなければ、その多くは形を変えてまた再発します。

本質的な課題解決の視点を持って取り組みましょう!

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以上、お役に立ちますように!