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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
10人~100人規模の中小企業が「業績連動型賞与」を設計する際において、賞与総額を振分けて各自への支給額を計算するときの「貢献率」の決め方について解説します。
(各個人の賞与)=(賞与総額)×(各個人の貢献率)
「貢献率」は、支給対象者の人事評価の結果の割合で計算しますが、職種の格差、評価レベルの格差など、公平に分配するために配慮すべき重要な注意点があります。
この記事は「業績連動型賞与の仕組み作りの概要」の補足です。
業績連動型賞与の計算方法の概要
まず「業績連動型賞与」の計算方法について全体像を確認しておきましょう。
STEP1:連動させる「業績」を決める
「業績連動型」の名前の通り、賞与支給額を業績に連動させる方法ですが、その計算の元となる指標、つまり「そもそも業績ってナニ?」ということを決めなければなりません。
一般的に多いのは「売上高」「限界利益」ですが、私は、一部のコストを計算に含める「独自の数字」を用いることをおススメしています。
賞与総額は、この「業績」に「分配率」を乗じて求めます。
(参考記事)業績連動型賞与|連動させる業績は何が良い?3つの事例
STEP2:「業績」のうちどれだけ分配するか?
STEP3:貢献に応じて各人に分配する
次に、この記事の本題です。
STEP2で計算した「賞与総額」に各人の「貢献率」を乗じると「各個人の賞与」が算出されます。この「貢献率」は、人事評価の結果に基づいて計算しますが、以下、詳しく解説します。
各自の賞与支給額を計算するための「貢献率」3つの注意点
「貢献率」の基本は下記のようにシンプルです。
人事評価の評価点 | 貢献率 | 賞与 | |
---|---|---|---|
Aさん | 70p | 28% | 140万円 |
Bさん | 60p | 24% | 120万円 |
Cさん | 50p | 20% | 100万円 |
Dさん | 40p | 16% | 80万円 |
Eさん | 30p | 12% | 60万円 |
(合計) | 250p | 100% | 賞与総額 500万円 |
人事評価による全員の評価点(付与ポイント。以下「p」)合計「250p」に対する各個人の「p」の割合です。この割合である「貢献率」を「賞与総額」に乗じて各自の賞与支給額を計算する仕組みです。
このように、計算自体はとてもシンプルなのですが、このルール作りにおいては3つの注意点があります。
- 注意点1:人事評価のルールを公開すること
- 注意点2:5段階評価のレベルの「差」をチューニングすること
- 注意点3:職種の「差」をチューニングすること
それぞれを解説します。
注意点1:人事評価のルールを公開すること
「業績連動型賞与」の基本的な考え方は「みんなで稼いで、みんなで分けよう!」です。この「貢献率」は、その「稼ぎに対する貢献の割合」であり、みんなで分けるための計算要素なので、公平な人事評価のルールが公開されていることが重要であり、また前提です。
まず「公平なルール」とは、スキルや成果が、正しく納得性のある「p」として反映されるルールであるかどうか?ということです。たとえば、スキルや成果が大きく違う2人の「p」の差がわずかしかないというような場合、この両者の納得を得ることは難しいでしょう。
また、そもそも論ですが、人事評価のルールが非公開で「ブラックボックス」である場合は、どれだけ「公平に計算したよ」と言ったところで、社員たちは「どうせ、社長が鉛筆ナメナメして決めたんだろ!」と、不信感の温床になってしまいます。人事評価の結果は非公開であっても、評価ルールは公開する必要があります。
「公平な人事評価のルールが公開されていること」は「貢献率」を決める際の前提となります。
注意点2:5段階評価の「差」をチューニングすること
私がコーチングの現場で活用している人事評価基準(スキルチェックシート)は、1点~5点の5段階です。(0点項目もあるので事実上「6段階」)
(参考記事)人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン|5段階の評価基準の設定
(参考テンプレート)5段階人事評価|基礎スキル記録シート
この点数によって「p」計算をするのですが「そのまま」計算すると、次のようになります。
評価基準の 点数 | 理解 レベル 1点 | 行動 レベル 2点 | 成果 レベル 3点 | 習慣 レベル 4点 | 指導者 レベル 5点 |
---|---|---|---|---|---|
評価点 (付与するp) | 1p | 2p | 3p | 4p | 5p |
各個人の「p」は、各評価項目の合計点になりますが、例えば20項目で評価する場合、「オール4点のAさん:80p」「オール2点のBさん:40p」という「差」になります。
このまま賞与計算をすると、Aさんの賞与は、Bさんの2倍になります。
そこで・・・これでいいか?という検討です。
この選択は、人事評価基準(スキルチェックシート)の難易度等で変わるので、それぞれの会社の事情によって「そのままでよい」、いや「チューニングが必要」、と結果は変わります。
「チューニングが必要」となる場合にもっとも多いのは、「1点→2点」にアップするのは、難しくないけど「4点→5点」はかなり難しい。この「1点アップ」が「同じ1p」というのは公平じゃない、という考え方です。
このような場合は、次のように調整します。
評価基準の 点数 | 理解 レベル 1点 | 行動 レベル 2点 | 成果 レベル 3点 | 習慣 レベル 4点 | 指導者 レベル 5点 |
---|---|---|---|---|---|
付与するp | 1p | 2p | 4p | 6p | 10p |
この例によると「0点→1点」にアップしたら「1p」多くなりますが「4点→5点」にアップしたら「4p」が多く付与される、という計算になります。
このように、評価点数に応じて付与するポイントが公平になるように5段階評価の「差」をチューニングすることを検討しましょう。
注意点3:職種の「差」をチューニングすること
次に検討が必要なのが、営業部門、開発部門、事務部門などの「職種の差」です。
評価基準の 点数 | 理解 レベル 1点 | 行動 レベル 2点 | 成果 レベル 3点 | 習慣 レベル 4点 | 指導者 レベル 5点 |
---|---|---|---|---|---|
付与するp | 1p | 2p | 4p | 6p | 10p |
たとえば「このまま」使うと、職種に関わらず「評価点が同じであればpも同じ」となります。
もし「それは、公平じゃない」ということであれば「職種の差」を付けなければなりません。これも会社の業種や事情によって「差のつけ方」は様々なので、それぞれの会社ごとにシミュレーションを重ねて「適正値」を探ります。
たとえば・・・
評価基準の 点数 | 職種 ウエイト | 理解 レベル 1点 | 行動 レベル 2点 | 成果 レベル 3点 | 習慣 レベル 4点 | 指導者 レベル 5点 |
---|---|---|---|---|---|---|
基準p | 1p | 2p | 4p | 6p | 10p | |
営業部門 | 2.0 | 2p | 4p | 8p | 12p | 20p |
開発部門 | 1.5 | 1.5p | 3p | 6p | 9p | 15p |
管理部門 | 1.0 | 1p | 2p | 4p | 6p | 10p |
このサンプルによると、営業部門で3点を取ると8pが与えられ、管理部門で3点を取ると4pが与えられるというように「職種ウエイト」の差がつくことになります。
まとめ
以上、業績連動型賞与の制度設計において「貢献率」のルールを決める際の注意点を3つ紹介しました。
「みんなで稼いで、みんなで分ける」という「業績連動型賞与」の仕組みの信頼性を保つために「貢献率」のルールはとても重要です。慎重に検討しましょう。
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