いまさら聞けない?「減価償却とキャッシュフローのキホン」

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


中小企業経営者が、決算書を読むとき「分かっているようで、実はあいまい」なのが「減価償却」です。

本稿では、減価償却とキャッシュフローの関係についての「基本」を整理しておくので「あいまい」な方は、この機会にスッキリするように理解を深めてください。

本稿は「決算書中小企業向け|決算書活用マニュアル」の補足です。

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決算書の利益に違和感を感じるとき

経営者ならだれでも一度は経験があると思うのですが、損益計算書の利益に違和感を感じるとき。

顧問税理士から

「今期の利益は1,000万円ですよ!」

と言われても、手元のキャッシュを考えると

「え?!1,000万円も儲けた実感がないなあ・・・」

という違和感です。

利益と資金の関係に違和感を感じるのは、売掛金や買掛金、さらに在庫など「損益と収支にタイムラグがある場合」に加えて、借入金の返済などが原因ですが、「減価償却」もその原因のひとつです。

償却前利益とは?

次の2つをよ~く見比べてみてください。

その1その2
売上高30,00030,000
売上原価20,00020,000
売上総利益10,00010,000
人的コスト4,0004,000
償却コスト3,0000
その他のコスト5,0008,000
コスト合計12,00012,000
経常損益▲2,000▲2,000
(*償却前利益)1,000▲2,000

もう、分かりますよね!?

どちらも「▲2,000の赤字」です。

ただ(その1)は、コストのうち3,000は償却コストなので「償却前利益」は、プラスの1,000となります。

つまり「赤字だけどキャッシュフローはプラス」になります。

償却前利益と返済との関係

この「償却前利益」は、借入金の返済余力をチェックするときによく出てきます。

上記の例で見てみると・・・

(その2)は、返済前の段階ですでに「▲2,000の赤字」なので、返済原資はないので手元の資金からの返済になります。

それに対して(その1)の方は「償却前利益」が1,000あるので、この範囲での返済ならば手元の資金は減りません。

もちろん、実務は「他の要因」があるので「償却前利益」だけで判断することはできませんが「返済余力」をチェックするときの基本となる指標になります。

上記の損益計算書において「返済が500」として、「償却前利益」と「返済」を追記してみると、次のようになります。

その1その2
売上高30,00030,000
売上原価20,00020,000
売上総利益10,00010,000
人的コスト4,0004,000
償却コスト3,0000
その他のコスト5,0008,000
コスト合計12,00012,000
経常利益▲2,000▲2,000
(*償却前利益)1,000▲2,000
(*返済)▲500▲500
(*資金増減額)500▲2,500

このように、損益計算書上はどちらも「▲2,000の赤字」ですが、キャッシュフローは全く変わります。

(関連記事)これなら分かる!キャッシュフロー計算書を3ステップで作る

設備投資、「償却」と「返済」どっちが長い?

いわゆる「設備資金」を借りる場合、その資金によって取得する設備の「償却期間」と「設備資金の返済期間」の関係を理解しておく必要があります。

例えば「5年返済」と「5年償却」というように、返済と償却の期間が一致していれば、5年通期で考えれば「キャッシュフローは安定」します。

しかし、「5年返済」なのに「10年償却」というように、返済より償却が遅い場合は、返済が速い分、キャッシュフローは悪くなり、反対に、「5年償却」なのに「10年でゆっくり返済」であれば、キャッシュフローに余裕が生じます。

もちろん、実際には「設備投資による増益」も見込まれるはずなので、一概には言えませんが、大きな設備投資による借り入れを行う場合、必ず、このキャッシュフローの予定を事前にチェックしましょう。

まとめ

いかがでしょう?償却とキャッシュフローの関係は正しく理解できていましたか?

これで「クイズ:赤字でも資金が増えるケースとは?」の回答がひとつ増えましたね。

「資金繰りがしんどいなあ・・・」と感情的にとらえるのではなく、資金繰りがしんどい理由を常に正しく把握しておくことが重要です。

改めて確認しておきましょう。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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