中小企業における「組織戦略」とは、経営者が求める「最高のチーム」を作り、最大限に活かす仕組みのこと。
前記事(02:組織戦略の全容|最高のチームを作る「5つの仕組み」)では、「組織戦略」を5つの要素で解説しました。
本稿では、この5つの要素を「組織戦略の目的」の視点で整理します。
「10人~200人規模の中小企業経営者」の「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを日々更新しています。
40年近く税理士として中小企業経営を支援し、経営計画や管理会計、組織作りを専門とするマネジメントコーチ・堀井弘三が、その現場で得た豊富な経験と知識に基づき執筆しています。
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【位置】
「組織戦略」は「経営戦略」の一部
「戦略」とは、
「成功するための仕組み」のこと。
「成功」とは、
「経営者が意図する成果を得ること」。
したがって、「経営戦略」は、
「経営者が掲げる経営目的を実現するための仕組み」と表現することができます。
最上位の「経営目的」が「企業理念」です。
会社の存在意義や、事業を通して実現したいことが「企業理念」で表現されています。
そして、その「企業理念」を実現するための「仕組」が「経営戦略」です。
「どうやって、企業理念を実現するのか?」
「企業理念」を目的とすれば、「経営戦略」は手段にあたります。
そして、この「経営戦略」を「ヒトモノカネ」という経営資源別に細分すると
- ヒト:「組織戦略」
- モノ:「販売計画」「開発計画」
- カネ:「財務戦略」
が、その中心となります。
「組織戦略」は、これらをパッケージにした「経営戦略」の一部という位置付けです。
以上をまとめると
「組織戦略」は、「企業理念を実現するためのヒトの仕組み」と言うことができます。
「組成(チームビルディング)・採用・育成・評価・分配」という5つの要素は、その仕組みをさらに細分したテーマとなります。
「企業理念」を実現するための
「経営戦略」を実行するための
「組織戦略」を5つの要素で仕組化する、と説明することができます。
以下、それぞれの要素別に「経営戦略の実行」という視点で整理します。
(1)組成:理念実現のためのチーム作り
以上を踏まえると、「組織戦略」の第一の要素である「組成(チームビルディング)」の目的は、「経営戦略を確実に実行できるチーム作り」です。
どのようなチーム編成をすれば、経営戦略を実行し、企業理念を実現することができるのか?
その主なチェックポイントは以下のとおりです。
- 企業理念を正しく理解し、共感、賛同しているメンバーで組成されていること
- 経営戦略を正しく理解し、チームの役割を踏まえ、その一員である各メンバーが自分の役割を認識していること
- 各メンバーが、自分の役割を実行に移すための十分なスキルを保有していること
- チームワークのためのルール(指示命令系統・職務分掌・職務権限等)が共有されていること
- 経営者と各メンバーを接続するミドルマネジメント(リーダークラス)が機能していること
「自分の役割」を正しく認識し、かつ、必要十分なスキルを備えたメンバーが、秩序あるルールに従い組織的に動くチームが組成されていると言えます。
「経営戦略」の確実な実行によって「企業理念」を実現できる確率は高いでしょう。
しかし、上記のチェックポイントに「NG項目」があれば、それが「チームビルディングの課題」であり、解決の対象となります。
実務的には、その解決施策がスケジューリングされ「経営計画:組織計画セクション」に明示されます。
なお「中期経営計画」は、上記を「36カ月の行動計画」に落とし込んだものという位置付けです。
(2)採用:チームの補強・強化策
「組織戦略」の2つめの要素である「採用」は、「チームの補強や強化」のための課題解決策という位置付けになります。
「経営戦略」を確実に実行するにあたり、不足しているポジション、弱点があるポジションを新たなメンバーを迎え入れることによって解決する、という視点です。
この視点における採用のチェックポイントは次のとおりです。
- 企業理念に掲げている考え方や価値観に共感、賛同する人材であること
- チームの弱点を補強できるに足るスキルやセンスを保有していること
- 既存メンバーとの親和性が高い人材であること
「組織戦略」の目的に照らすと「理念共有」は特に重要な要素です。
採用活動において、「スキル偏重」にならないように留意する必要があります。
また、「片思い」にならないように、「求める人材に選ばれる企業か?」というセルフチェックも忘れないようにしましょう。
(3)育成:チームの戦力強化策
「組成」のチェックポイントにもあったように「役割を実行できるにたるスキルを持った人材」が必要なことは言うまでもありません。
「人的資本経営」の思想における「投資」の中心です。
「成長投資」によって、人材の「戦力値」を高める取り組みが欠かせません。
そのためには、個々のメンバーの「成長課題」と「その解決策」を明確にし、共有することが重要です。
メンバー当事者は、
「経営戦略」の実行にあたり、
「何が不足しているのか?」
「どうすればそのスキルを伸ばせるのか?」を自己認識。
それを共有する経営者は
「そのために、どんな投資をするべきか?」を検討。
重要なのは「経営戦略を実行するにあたっての成長課題」という視点です。
「一般的に優秀な人材」に育成するのではありません。
「当社にとって優秀な人材」に育成しなければなりません。
あくまでも「企業理念の実現」と「経営戦略の実行」が目的です。
これを「仕組化」するにあたっての主なチェックポイントは次の通りです。
- 戦略実行にあたってのスキル要件は「人事評価基準」に明示されているか?
- 戦略実行にあたってのスキル開発の具体的な方法は明確か?
- スキル以外に、メンタルやフィジカルの不調を察知できる仕組みはあるか?
- 企業理念や経営戦略を伝え、浸透させる仕組みはあるか?
- 人材を育てるスキルを持った人材は増えているか?
「育成」においても「持続的な仕組み」が重要です。
(4)評価:貢献評価と成長課題の共有
人事評価の目的は、大きく2つ。
ひとつは、「公平公正な給与や賞与を決めるため」。
「経営戦略の実行」にあたり、どれくらい貢献できたか?を評価するために人事評価の仕組みが必要です。
もうひとつは、「成長支援のため」。
「経営戦略の実行」にあたり、充分なスキル、不足しているスキルを明確にするために必要です。
主なチェックポイントは下記の通りです。
- 企業理念の理解と賛同を評価できる基準項目はあるか?
- 人事評価基準の各項目は、戦略実行の要件とリンクしているか?
- 経営戦略の理解を評価できる基準項目はあるか?
- 人事評価の目的が「成長支援」であることは共有できているか?
重要なので、繰り返します。
「当社の経営戦略を実行するためのスキルセット」が評価基準であることがとても重要です。
教材やネットで配布されている一般的な評価基準をコピペで使うようなことがないように気を付けましょう。
(5)分配:理念に基づいた公正な分配
チームのそれぞれが、協力しあって得た「成果」。
この「成果」をどのように分配するか?
どうやって、戦略実行に報いるか?
「成果分配」の仕組みも「組織戦略」の重要な要素です。
もっともシンプルなコンセプトは
「みんなで稼いで、みんなで分かち合う」
そのための主なチェックポイントは、次の通りです。
- 成果分配のルールは公表され、正しく理解されているか?
- 成果とは何かが定義され「計算」できる指標で表現されているか?
- 「分配率」「貢献率」の計算ルールは公平公正か?
- 「人事評価」は適正に運用されているか?
公平公正な成果分配の仕組みは、メンバーのモチベーションに直結します。
成果分配に課題があれば、メンバーのパフォーマンスは低下し、経営戦略の実行に悪影響が及びます。
デリケートなテーマです。
慎重に設計し、ていねいに運用しましょう。
【要点】
何のためのチームか?
さて、いかがでしょう?
「組織戦略」の目的を整理しました。
「組織戦略」は「経営戦略」の一部。
その目的は「企業理念を実現するためのチーム作り」です。
5つの要素すべてが「経営戦略の実行」という視点でつながっています。
- 組成:経営戦略を実行できるチームを描く
- 採用:チームの課題を解決するための補強や強化
- 育成:戦略実行に必要なスキルを伸ばす
- 評価:貢献と成長課題を見える化する
- 分配:成果を公平公正に分かち合う
「一般的に優秀な人材」ではなく「当社にとって優秀な人材」を育てるための投資。
そのためには、目的である「企業理念」と「経営戦略」が前提条件となります。
「何のためのチームか?」を見失わないように!
【参考】
中小企業の組織戦略の全記事リスト
3部:採用編
このWEBサイトでは、ひとりでも多くの経営者の方々のお役に立ちたいという思いを持って、なるべく深く、そして詳しく発信しているつもりなのですが、「ひと」に関することには「どうしても書けないこと=公表できないこと」があります。
特に、人事評価とか給与賞与に関するマネジメントには、その性質上「社員さんたちには知られない方がいいこと」があります。
お察しのとおり、このWEBサイトは経営者の方だけではなく、一般社員さんたちもアクセスし読むことができます。
すべて「理想論」や「タテマエ」で解決できればいいのですが、「人に関する実務」はそんなに甘いものではなく、時には「荒療治」しなければならないシーンがあります。この「荒療治」を文字で誤解なく伝えることはとても困難です。
また、カモフラージュした「事例紹介」であっても、当事者の方々にとっては「あ、この記事、当社のことやん」ってすぐにわかってしまいます。それは、その社員さんにとっても「あ、自分のことだ」とわかってしまいます。「いい話」の場合はいいのですが「よくない話」の場合は、気分を害したり、あらぬ誤解を生じさせたりするリスクがあります。
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「それが聞きたいのに・・・」と、物足りなさを感じられる方も少なくないと思いますが、何卒ご了承ください。


