決算書は「経営者の人生の記録」なので大切に積み重ねること

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毎期、良かったこと、悪かったこと、楽しいかったこと、苦しかったこと、様々な思いを持って日々を過ごす経営者にとって「決算書」は、良くも悪くもひとつの成果であり、他人には見えない、分からない「様々な思い出」が詰まっています。

若い頃は「税務署や銀行に提出する書類のひとつ」に過ぎないと思いますが、年齢を重ねると「違った見え方」がするものです。

本稿では、決算書は「経営者の人生の記録」であるというエピソードを紹介します。

この記事は「決算書中小企業向け|決算書活用マニュアル」の補足です。

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「私にとって決算書は人生の記録です」

20年ほど前の出来事です。

ある元経営者の方からいただいたお言葉。

まだ若く修行中の身であった「会計事務所の担当者」として、私はこの元経営者に数年間にわたって大変お世話になりました。

もう引退されて何年か経ったある日、「相続税で相談したい」とご連絡をいただき、当時私が経営していたの税理士事務所までお越しいただき、数年ぶりに再会しました。

お世話になっていた時代のいろんな思い出話で盛り上がってるとき、ふと「堀井さんが作ってくれた決算書はね、今、見直すとね、私の大切な人生の記録だよ、ありがとう。」と言われました。

私は「ハッと」しました。

決算書って人生の記録なんや!

決算書に対する私の視点がガラリと変わった瞬間でした。

税理士である私は、数十社、数百社の決算書を毎日のように見ていましたが、経営者の方にとっては「1年に1冊だけの決算書」なんですよね。

それ以来、決算書を見ると「1年間、お疲れ様でした!」という気持ちが自然に湧いてくるようになり、それ以来、当社では決算書に「お疲れ様でした」とメッセージを添えるようになりました。

「税務署に所得申告をするため」という視点とは全く違って「お客さんの人生を記録するため」という視点に気付かせてもらったことは、とても貴重で、今、こうして思い返しても「すごい転機やったな」と思います。

「決算書を見てるといろいろ思い出すよ」

その元経営者は、続けて「決算書を見てると、当時のいろんなことを思い出すよ」と話を続けてくれました。

  • 売上目標を達成してとてもうれしかったこと
  • 資金繰りが苦しくて苦労したこと
  • 海外進出するために視察に行ったときのこと
  • 思い切って本社と工場を建て替えたこと

など・・・当事者だからこそ見えてくる決算書からの情報には思い出がいっぱい詰まってたんですね。

私は、2022年3月に税理士を引退し、後輩税理士に事業承継したのですが、明け渡しに際して荷物整理をしていると、その中に「自分の開業1年目の確定申告書」もありました。「平成11年分の確定申告書」です。今度は「当事者」として「あ、ボクの人生の記録や!」と、このエピソードを思い出したのです。

「まじめに経営しておいてよかったよ」

さらに、その方は、しみじみ「まじめに経営しておいて良かったよ」をおっしゃいました。

「???」という顔をしてると「いやね・・・もし、あのとき粉飾や脱税をしていたら、それも記録として残ってたはずでしょ。ごまかすことなく正直な決算をしておいてよかったと思うよ」と微笑みながらお話ししてくださいました。

「御意!」です。

当時から着々と順調かつ健全な成長をされていた会社の「本当の理由」がわかったような気がしました。

経営者のこの姿勢が健全な成長のために本質的に必要なことなんだ、と今になって本当に強く思います。

「まじめな経営」をして「正直な決算書」を「人生の記録」として積み重ねていく、ということが、実は難しいことであることもわかってるからこそ、この元経営者から学ぶことはとても大きいことでした。そして、年齢を重ねるごとに「その大きさ」がどんどん大きくなっていくことを感じています。

まじめに経営した姿を残すことの大切さ

「決算書は経営者の人生の記録」というエピソードを紹介しました。

まだ若い経営者の方々には、いまひとつ響かない話かもしれません。でも、経営者ならいつか「じわじわ」と感じてくれるエピソードだと思います。

まじめに経営した姿を積み重ね、それを残すことはとても大切だと思います。粉飾決算や脱税など「ごまかした経営」をすれば、それも「そのまま」記録として残ります。年齢を重ねた時「見たくない書類」になるか、「まじめに経営したことを満足感を持って見れる書類」になるかは、「今」が大切です。

たかが決算書、されど決算書です。イイ記録を残しましょう!

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