26歳で税理士業界に入り、40年近くにわたり多くの経営者と接してきました。
「様々な経営者の人生」を近くで見てきました。
中には、羨むほど幸せな経営者もいれば、手の差し伸べようもない状態に陥ってしまった経営者もいます。
百者百様、いや、万者万様と言えるほど「様々な人生」があり、その「伴走」は今も続いています。
また、最近までは「当事者」でもありました。
37歳で独立開業し、60歳で事業承継するまでの20数年間。
その経験や体験を通じて「経営計画は人生計画の一部だ」と強く思うになりました。
今回は「経営計画」を作る過程で忘れがちな「経営者の引退」について書き留めておきます。
「10人~200人規模の中小企業経営者」の「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを日々更新しています。
40年近く税理士として中小企業経営を支援し、経営計画や管理会計、組織作りを専門とするマネジメントコーチ・堀井弘三が、その現場で得た豊富な経験と知識に基づき執筆しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このWEBサイトについて」をまずご覧ください。
【現実直視】
「出口」を軽視すると後悔する
「経営者の出口」を軽視すると「後悔」する可能性が高くなります。
「出口? まだ先の話でしょ」
「それより、今は目の前の売上」
若い経営者ほど、そう思うかもしれません。
しかし、ここでは「おどし」をかけておきます。
「今からよぉ考えておかんと、いずれ後悔するで」
税理士として約40年、数多くの「中小企業経営者の晩年」を見てきました。
残念ながら、「ハッピーリタイア」ができた人は少数派です。
- 後継者が見つからない。
- 借金が残ってるので完済するまで辞めるに辞められない。
- 廃業したいが、苦楽を共にした社員の生活を考えると踏み切れない。
- 会社を売るときの課税が想定外。
- 楽しいセカンドライフを夢見てたけどなぁ・・・。
これら「ハッピーではない状態」の原因は、すべて「準備不足」と言えます。
「入口(創業)」は勢いでなんとかなります。
「少ない人」と「少ないお金」でできるからです。
しかし、「出口(引退)」は勢いだけではどうにもなりません。
「多くの人」と「大きなお金」が関わるからです。
また「若いころ」は、「なんとかなる!」という根拠のない自信や安心があります。
まさに「若いから」です
しかし、人は老います、衰えます。
「なんとかできるはず」だったことは、「そうしようもないこと」になることが多いものです。
「若手」と言われる40代の経営者でも、20代の頃とは違うことを実感しているはずです。
60代になれば、40代なんて「バリバリ・ピチピチ」って感じるようになります。
「備えあれば患いなし」&「備えあれば憂いなし」
「出口想定をした準備」を強くおススメします。
【未来想定】
この先、どんな世の中になる?
これを書いている時点で、日本の人口が1億人を割り込むのが2056年と予測されています。
約30年後ですね。
高齢化比率もどんどん上昇する日本の未来はどうなるのでしょうか?
様々なレポートが公表されています。
人口だけではなく「世の中の変化予測」について、楽観的な人、悲観的な人は様々ですが「自分なりの答え=自責の未来予測」を持っておく必要があります。
その「自分なりの答え=自分の予測」に、どのような対応していくのか?も「人生計画」に欠かせません。
必ず「環境」は変わります。
ちなみに、私が大学を卒業して、いわゆる社会人になったとき(1980年代前半)、まだインターネットは一般的ではありませんでした。携帯電話(もちろんガラケー)も一部の人しか持っていませんでした。音楽はCDが出始めの頃でどちらかというとレコードを買っていました。映画はもちろん映画館に行ってました。約40年前です。さらに約15年前、よく海外出張に行ってましたが、当時のドル円相場は約80円、今の2倍の「円高」で「外国って安いなあ」と気楽に出国してたものです。そして、今「すでに未来やん!」と思うくらい「AI」が急速に進化しています。
振り返ると、20年~40年の間に世の中は大きく様変わりしました。
当時、新しい技術にワクワクもドキドキもしましたが、まだ法人化が認められていない税理士業界も「間違いなく変わる」と確信して様々な勉強をしたものです。
ちなみに、バブルの時代は、世界の中心地の不動産が日本のものになり、「無敵やん!」とさえ思っていました。
花形産業は「自動車」や「電機」でした。
「未来想定」するとき、「環境が変わる」ということを同時に想定することがとても重要です。
(参考サイト)
- 未来年表(博報堂)
https://seikatsusoken.jp/futuretimeline/ - 野村総合研究所
https://www.nri.com/jp/knowledge/publication/cc/nenpyo/lst/2024/2024/2024 - 国立社会保障・人口問題研究所
https://www.ipss.go.jp/index.asp
【出口選択】
引退時、会社はどうする?
経営者の出口。
突き詰めれば、選択肢は「売る」か「たたむ」かの2択です。
「後継者への承継」も「M&A」も、経営権を他者に渡すという意味で広く「売る(譲渡)」に入ります。
それができなければ、会社を解散する「たたむ(廃業)」しかありません。
そして、どちらを選ぶにせよ、目指すべきは「ソフトランディング(軟着陸)」です。
下に両極端を示しておきます。
この「天国と地獄」を分けるもの。
それが「人生計画」とリンクした「経営計画」です。
理想のハッピーストーリー
- 会社を大切にしてくれる後継者がいる。
- 退職金や株式売却益で、十分な老後資金が手に入る。
- 社員の雇用は守られ、取引先とも良好な関係が続く。
- 自分は感謝されながら花道を去る。
- 引退後も、人間関係は良好に続く。
避けたいバッドストーリー
- 後継者がおらず、買い手も見つからない。
- 老後資金どころか、借金の個人保証が残る。
- 廃業によって社員は解雇、取引先には迷惑をかける。
- 「もっと早く準備しておけば」と悔やみながら去る。
- 引退後、蜘蛛の子を散らしたように、人がいなくなる。
【準備方針】
課題解決策を練っておく
ハッピーリタイアのためには何を準備すればいいのか?
課題は大きく3つのカテゴリー、「ヒト・モノ・カネ」に整理できます。
ヒトの事:後継チーム
「次の社長は誰か?」という後継者問題だけではありません。
経営者と同時に、幹部や古参社員も歳をとります。
「次世代の経営チーム」は育っていますか?
自分が抜けても回る「組織」になっていますか?
モノの事:ノウハウの承継
中小企業の強みは、創業者の「アタマの中(技術、人脈、勘)」にあることが多いです。
これらが属人化したままだと、誰も引き継げません。
形式知化し、他者が使える状態にするには時間がかかります。
カネの事:貸借対照表
私はよく「貸借対照表(B/S)は引退のパスポート」だと言います。
もし、時価ベースで「債務超過」なら、誰も会社を買ってくれません。
親族承継だとしても、可愛い子供に「借金の肩代わり」をさせたい親はいませんよね?
退職金を払ってもビクともしない「内部留保=時価純資産」を作れるかどうかが、引退の成否に大きく影響します。
【人生計画】
長期計画ありき
ヒト・モノ・カネ。
いずれも、一朝一夕には準備、課題解決はできません。
- ヒト:後継者を育てるのに数年
- モノ:ノウハウ伝授に数年
- カネ:内部留保を積み上げるのに数年
経験的に言えば、事業承継は「10年がかりのプロジェクト」です。
もしあなたが「60歳で引退したい」なら、「50歳」から準備を始めなければ間に合いません。
以下のような「逆算カレンダー」を参考にしてみてください。
(例) 60歳引退の逆算スケジュール
- 50歳(残り10年): 後継候補の選定開始。内部留保の目標設定。
- 53歳(残り7年): 各部門長の世代交代とトレーニング。
- 55歳(残り5年): ノウハウのマニュアル化。借入金の圧縮加速。
- 57歳(残り3年): 社長交代(自分は会長へ)。後継者を後ろから支える。
- 60歳(ゴール): 会長も退任。退職金を受け取り、株式を手放して完全引退。
どうでしょうか?
「まだ10年ある」ではありません。
「もう10年しかない」のです。
*簡単なフォーマットをフリーで公開しています:Googleスプレッドシート「未来年表」サンプル:ご参考まで!
【要点確認】
まずは「初版」を作ろう
さて、どうでしょう?
この話をすると、よく「ホリイさん、心配症やな」とよく言われます。
今までも、よく言われました。
でも、その多くは「ほら!言わんこっちゃない!」って状態。
経営者の引退の成否は、「幸福」か「不幸」が「評価軸」です。
関わる人の誰もに「イヤな思いをさせない引退」。
誰かに迷惑をかけたり、誰かが犠牲になる引退は、成功とは言えません。
この「出口」を考えると「経営計画」がゴロっと変わることが少なくありません。
もし、まだ「未来想定」をしていないなら、さっそく「初版」を作りましょう。
それを毎年アップデートするだけで「人生は変わります」。
お役に立ちますように!
【関連記事】
中小企業の経営計画実践ガイド
- 01:経営計画の本質|経営者の「人生計画」
- 02:経営計画の本質|幸せな引退のための「10年計画」
- 03:経営計画の基礎|36ヶ月計画の「6ステップ」
- 04:経営計画の実務|上手に運用する「コツ」
- 05:経営計画の種類|成長段階別「7つのパターン」
- 06:経営計画の工夫|長いなら「四半期」で区切る
- 07:経営計画の良否|良い計画は「ゴール=目標」が秀逸
- 08:経営計画の失敗|質が伴わない量的拡大プラン
- 09:経営計画の盲点|売上は目標利益から逆算する
- 10:経営計画の効果|「強い気持ち」で収益力強化
- 11:経営計画の目標|利益の目標設定「6パターン」
- 12:経営計画の目標|賞与から利益を逆算するシン視点
- 13:経営計画の目標|「定量」と「定性」の複眼視点
- 14:経営計画と組織|「最高のチーム」という目標設定
- 15:経営計画の盲点|「生涯収入」の見込みと目標設定


