「経理」が「参謀」に変わる?
そんなことが可能なのか?
それを実現したある小さな会社の
リアルストーリー

「経理」が「参謀」に変わるなんて想像できないよ!
そんな経営者の方に、
「想像してほしい!」と思い、
そのリアルを再現してみました。
私が、数多くの中小企業で「管理会計を実装」してきた回想記録。
一人でも多くの経営者に「できそう!」と感じてもらえれば!と思い、「AI達」に協力してもらいました。
もちろん、フィクションですが、まあまあリアルにできたかな?と思います。
お役に立てばいいのですが…。
【回想再現】
経理が参謀に変わっていく!
登場人物はこちら
- 前田トシオ
50代・製造業・従業員35名のKHLD社代表取締役 - 松島マツコ
40代・経理歴15年のベテラン担当 - 木下ヒデオ
50代・顧問税理士・前田社長の同級生 - ホリイ
株式会社マーカス・マネジメント代表・元税理士
Scene 1
きっかけは「お問い合わせ」から


夏のある夜、いつものバーのカウンター。
ケータイで「お問い合わせ」からのメッセージに気付く。



貴社サイトの「やたら会計に強い経営者になればいい」を読みました。一度、会って話したいのですが。
ーー KHLD社 前田としお
この社長も、一人で「モヤモヤ」しておられるんやなと思う。
酔いも手伝ってか「任して!」とつぶやいてから、ていねいにお返事した。
Scene 2
初回面談「この会社なら大丈夫!」


KHLD社に訪問。
さっそく、社長室に通してもらうと、すでに、前田社長と、経理を担当されている松島さんがお待ちだった。
「はじめまして!マーカスのホリイです。」
三者の初顔合わせだ。
さっそく、前田社長が
「毎月、試算表を見ているんですが、正直、よくわからなくて」と、話し始めてくれた。
松島さんは(私のせいみたいに言わないでよ)という顔をしてるが、よくあることだ。
「分からないのは、試算表ではなく、経営が、ですよね?」
「そう。貸借対照表も損益計算書も知っています。でも、そこに並んでいる数字が、いいのか?わるいのか?モヤモヤしてるんですよ。」
「前田社長のモヤモヤは、視点の問題だと思いますが、この記事を読んでみてください。」
私は、例の記事をその場で紹介し読んでもらった。
社長は、読み終えて「これ!まさにこれ!」と少々興奮気味。
松島さんは、想定通り「私を戦力化?」という顔をして、すでにバリアを張り始めている。
社長は、そんな松島さんの反応には気付くこともなく、
「ホリイさん!ぜひ、このバックオフィスの戦力化のサポートしてください!」
「し、承知しました。喜んで!」
さっそく、お引き受けすることになったが、「見積書」を確認してないけど、いいのかな?と、私は心で苦笑してた。
Scene 3
経理の現状をヒアリング


数日後、ふたたびKHLD社を訪れた。
今回の目的は「経理の現状把握」。
経理室で、担当の松島さんにヒアリングした。
「松島さん、お忙しいところ、ありがとうございます」
「いえ・・・」
「では、さっそくなんですが・・・」
ヒアリングした主なものはこれ。
- 毎月、試算表を社長に提出するのはいつ頃?
- 松島さんと顧問税理士先生との役割分担は?
- 現在、月次処理で困っていることは?
- 毎月のルーティンで忙しい時期は?
- 売上の数字は、どこから入手してる?
- 給与計算は、どなたが?
相変わらず表情はさえないが、ていねいに教えてくれるので、ありがたい。
1時間ほどのヒアリングで、毎月の試算表がアウトプットされるまでのフローや問題点が見えた。
「松島さん、ちょっと聞き辛いことお聞きしますが…」
「はい、なんでしょう?」
「前田社長って、会計のこと、よくお分かりですか?」
「は、はい…。でも、売上と利益しか見てないと思います」
「ロクに見ないで、モヤモヤしておられる?」
「そ!そうなんですよ!」
松島さんの表情が、初めてほころんだ。
少し、私のことを(ひょっとしたら味方かも?)と思ってくれた気がする。
私は、心の中で小さくガッツポーズをした。
Scene 4
社長と課題共有、そして宿題


KHLD社社長室。
先日の、ヒアリング結果を社長に報告して課題共有。
「社長、現状の課題と解決策が整理できました。」
「はい、どうでしたか?」
- 松島さんの経理処理能力は充分であること
- 月次処理が遅延するのは、営業や資材担当からの資料提供が遅いことが原因であること
- 毎月の在庫計上の意識がないこと
- 製造業であるにも関わらず、減価償却費が月々計上されていないこと
その他、様々な課題を共有したが、そのあと…。
「社長には、耳が痛いことだと思いますが」と前置きして
「社長、会計の勉強をしたことがないでしょ?」
「だから、モヤモヤしてるんです」と畳みかけた。
前田社長は、キョトンとしたあと、ばつが悪そうに頭をかいた。
「どうすればいいですか?」
先日、読んでもらった記事に書いていましたが・・・
「え?あの総勘定元帳を読め!って話ですか?」
「そうです!話が早い!」
「そんな時間、あるかなあ…」
「え?このままずっと、モヤモヤし続けるおつもりですか?」
「ホリイさん、噂通りのイジワルやなあ…」
「社長のためですから!」
「わかりました!」
「約束ですよ!」
Scene 5
松島さんのバリア突破!


いよいよ、実務。
再び、松島さんを訪ねた。
「松島さん、先日はありがとうございました。」
「いえ、お役に立てましたか?」
「もちろんです!課題は社長とも共有できましたし…」
「でも、そのおかげで、とても忙しくなりました…」
「え?」
「毎日のように、総勘定元帳を抱えた社長が、これナニ?これは?これは?ってうるさくて……しょっちゅう手を止められます」
「あ、社長、ちゃんと宿題をやってくれているですね(笑)」
「笑い事じゃないですよ、ホリイさん!」
「今だけですから!少しだけガマンしてください!」
手を合わせてお願いし、薄目で松島さんの表情をうかがう。
口では困ってるって言ってるけど、表情は、心なしかうれしそう。
「やりがいのない仕事」が、「ひょっとしたら、やりがいある仕事かも」って感じ始めてるんだ、と私は知ってる。
だって、今までは「ロクに見てもらえない試算表」を届けるだけだったから。
私は、2回目の「心のガッツポーズ」をした。
松島さんのバリア突破のチャンスがやってきた。
「松島さん、勘定科目を一新したいんですが」
「は?どういうことですか?」
「松島さんの試算表って、今までは集計表でしたよね?」
「は、はい。でも、試算表ってそういうものでしょう?」
「はい、普通の会社の試算表はそうです。集計表。」
「で、どうしろと?」
「今回、御社の試算表を経営に役立つ情報に進化させるんです。これが、そのための新旧対比リストです。」
- 旅費交通費→交通費・出張費・通勤手当
- 接待交際費→営業交際費・役員交際費
- 減価償却費→減償費:設備・減償費:本社
- (以下、その他20数項目)
「え?こんなに?こんなに変えてしまっていいんですか?この変更は木下先生の許可が必要だと思います。」
「税理士先生ですよね?じゃあ、先生が了解してくれれば、進められますよね?」
「はぁ、はい、木下先生がいいって言うなら」
Scene 6
顧問税理士に協力依頼


木下税理士事務所に、前田社長とともに訪問。
今回の「管理会計実装」の取り組みをご説明。
すると、木下先生。
「松島さんのご様子は?」
松島さんがどのような反応を示されたかをすでにお察しで、心配のご様子。
「先生、お気遣い、ありがとうございます」
続けて、これまでの経緯と、これからの進め方についてご説明差し上げた。
「それなら、安心です。ただ、当方の手間が多少増えますが…」と言って前田社長に目配せ。
前田社長は、即答。
「わかってるよ!報酬アップだろ?」
木下税理士は、にっこりして、今回の取り組みに全面的に協力する旨を示してくださった。
「ありがとうございます!」
自然にガッツポーズが出て、二人に笑われた。
Scene 7
いよいよ実務に着手!


社長の勉強も進み、税理士先生の協力も取り付けた。
「外堀」は着々と埋まってる。
さ、いよいよ「実務」だ。
「松島さん!木下先生、全面協力するって言ってくださいましたよ!」
「はい、すでに社長から聞きましたよ。」
スムーズに事が進んで、前田社長も嬉しかったことが伺える。
「で?」。
「??」。
「いよいよ、やるんでしょ?」
「ありがとうございます!では・・・」
松島さんにお願いする仕事について説明した。
「…ってことで、まず、新しい勘定科目を設定して…」
「…今後は、その新しい科目で処理してください…」
「今後は、ですね?」
「いや、期首にさかのぼって、過去のデータも新しい科目に修正してほしいんです」
「え!?期首?」
「は、はい!」
「わ・か・り・ま・し・た!」
今回ばかりは、ガッツポーズが素直に出てこなかった。
半泣きになっている松島さんに深々と頭を下げた。
「松島さん!ありがとうございますっ!」
期首からの数か月分のデータ修正には、それなりの手間がかかるのを知っているだけに、心のなかでは「ごめんね!」って気持ちだった。
Scene 8
シン・試算表!


あれから1ヶ月が経った。
松島さんから「修正した会計データ」のファイルが届いたので、チェック。
見事に「新しい勘定科目」の「シン・試算表」となっていた。
これで、自信を持って社長にご報告できる。
さっそく、KHLD社に訪問。
社長室。
「どう?できたって?」
「はい、社長!」
松島さんが、誇らしいのか、恥ずかしいのか、よくわからない複雑な表情で・・・
「社長、これです。どうですか?」
松島さんから「シン・試算表」を手渡された社長。
その第一声に思わず笑ってしまった。
「ん?これ、ウチの試算表?」
「社長、何を言ってるんですか?」
「まぎれもなく、KHLD社の試算表ですよ!」
「これだ!これだ!違和感がなくなってるよ!」
前田社長の、新しいおもちゃを買ってもらった子供のような反応に、松島さんも思わず笑ってた。
「松島さん!ありがとう!大変だったでしょ?」
前田社長は、松島さんをねぎらい、お礼を言ってくれた。
「いや、ホリイコーチのおかげです、社長」
ん?あれほど「平和を乱す侵略者」のように、私のことを見てた松島さんが「コーチ」って言ってくれた。
心の中で「惚れてまうやろ!」って小さく叫んだ。
でも、これで完成ではない。
「社長、これで無事に前半戦が終わりました。」
「ん?前半戦?」
「はい、後半戦では、この試算表をマネジメントレポートに変換します。」
松島さんが一瞬凍り付いたことに気付いて…
「後半戦は、私の仕事です。松島さん、安心してください!」
社長に2週間の時間をもらって、さっそく「レポート制作」にとりかかることにした。


Scene 9
マネジメントレポートのお披露目


KHLD社、社長室。三者、再集合。
「マネジメントレポートの試作版ができました!」
「なんじゃこりゃ!」
この「なんじゃこりゃ!」って反応は初めてではない。想定済みだ。
レポートを凝視している社長の隣で…
「これ、私が作った試算表がベースになってるんですか?」
「もちろんじゃないですか!松島さんのデータがなければ、これは生まれていませんよ!」
今度は間違いなく、誇らしい表情を見せてくれた。
社長も、満足してくれたようで、安堵する。
「いや、サンプルは見せてもらってたけど、自社の数字で見ると、改めて、この凄さを実感するよ!」
「松島さん、君のおかげだよ!本当にありがとう!」
「いえ……ホリイコーチが言うとおりにしただけですよ、私は」
私は、年甲斐もなく照れ隠し。
「いやいや、松島さんの、お・か・げ!」
松島さん、しみじみと
「役に立てるって、こんなにうれしいんですね」
「松島さん!給料、5万円アップするよ!情報手当だ!」
「え!!!」
「ホリイさんの高い顧問料に比べれば安いもんよ!」
前田社長の本気か冗談かわからないコメントを受けて…
「ですよね~(笑)、でも、松島さん、良かったですね!」
「はい、今度、ごちそうします!」
ホンマに惚れてまうやろ!って、また思った。
・・・おしまい・・・
【要点解説】
経理を参謀にする3ステップ
「経理担当」を「参謀」にする実務を再現しました。
「参謀」という言葉のイメージとは違ったかもしれませんが、「経営情報を提供してくれる役割」というだけで「初めの一歩」は充分だと思います。
この話には、続編があります。
部門会計、予算管理、経営計画と進化していくステップです。
そのステップを通じて「松島さん」は、まだまだ成長していきます。
でも、その起点は
「経理」は
「事務処理」ではなく「情報処理」であると
「視点転換」することから始まります。
さて「できそう!」と感じてくれましたか?
それとも「やりたい!」と思ってくれましたか?
おさらいしておきましょう。
このストーリーを整理すると、実は3つのステップしかありません。
- Step 1:経営者が動く
総勘定元帳を熟読し、違和感をピックアップする。
「社長が帳簿を読んでいる」という事実だけで、現場の空気は変わり始めます。 - Step 2:関係者を巻き込む
経理担当、顧問税理士、それぞれの「立場と利益」を理解した上で対話する。
「指示」ではなく「対話」が、抵抗勢力を協業仲間に変えます。 - Step 3:小さな成功を認める
「違和感がなくなってる!」「なんじゃこりゃ!」
そんな経営者の言葉で「経理担当」を「情報担当」に引き上げることができます。
松島さんの「役に立てるって、こんなにうれしいんですね」という言葉が、すべてを物語っています。
お役に立ちますように!






