「人件費」は適正ですか?
「儲け」と「給与」のバランスは良好ですか?
「余裕」ですか?
「ヤバイ」ですか?
「どれくらい余裕/ヤバイですか?」
(そんなこと聞かれても・・・)
もし、この会話のキャッチボールが苦手なら、ぜひ、本稿を参考にしてください。
読み終えたら「スラスラ」答えられるようになると思います。
中小企業の「人的コスト比率」について整理します。
「10人~200人規模の中小企業経営者」の「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを日々更新しています。
40年近く税理士として中小企業経営を支援し、経営計画や管理会計、組織作りを専門とするマネジメントコーチ・堀井弘三が、その現場で得た豊富な経験と知識に基づき執筆しています。
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【はじめに】
数字の良し悪しが分かるか?
本題に入る前に「会計を活用する重要視点」について、サッと「おさらい」しておきます。
- 「人件費率」って聞いて「売上と人件費の比率でしょ?」と答えられる人
=「知っている人」 - じゃあ「人件費率」の適正値は?と聞かれて「業種によって違うでしょ?」とゴマカス人
=「知ったかぶりの人」 - でも「売上に対する比率は業種によって違うから、分母は限界利益でしょ」と言える人
=「イイ線行ってる人」 - そこで「人件費率は、限界利益の40%の範囲内でないとヤバイよ!」って「ドヤ顔」できる人
=「ツワモノ!」
「人件費率」という四字熟語ひとつでも、これだけの「ばらつき」があります。
「何が言いたいの?」
会計の世界には、いろんな「分析数値」がありますが、「その計算方法」だけを知っていても、なんの役にも立ちません。
言うまでもないと思います。
その「分析数値」を見て、「良し悪し」の判断や評価ができなければ「意味なし」ですよね。
以下、読み進めるにあたって「なぜ?」に注意してください。
「計算方法」の話ではありません。
・・・念のため。
【用語確認】
[人的コスト] とは?
「人的コスト比率」に限ったことではありませんが、各種の「指標」を見るときは「分母・分子」に何が含まれているか?を正しく知る必要があります。

この記事において「人的コスト比率」は「MA損益計算書」の「限界利益」に対する「人的コスト」の比率を指します。
「人的コスト」は「事業コスト」の一部として含まれています。
「人的コスト」には、給与賞与以外にも、社会保険の会社負担額、通勤手当、福利厚生費など、メンバーに関わる多くのコストを含むカテゴリーです。
【用語注意】
[人件費]ではなく[人的コスト]
「人的コスト比率」は、前述のように「人的コスト/限界利益」で計算しますが、よく似た指標に「付加価値分配率・労働分配率」や「人件費率」があります。
この記事で紹介する「人的コスト比率」と比較一覧すると次のようになります。
| 私の管理会計 | 一般の財務分析 | 一般の財務分析 |
|---|---|---|
| 【人的コスト比率】 | 【付加価値分配率】 または 【労働分配率】 | 【人件費率】 |
| 分子:人的コスト ーーーーーーーー 分母:限界利益 | 分子:人件費 ーーーーーーー 分母:付加価値 | 分子:人件費 ーーーーーー 分母:売上高 |
なぜ「人的コスト比率」なのか?
その理由の一つは「人件費率が役に立たないから」です。
分母に「売上高」を持ってきても、経営の役には立ちません。
なぜなら、業種によってバラバラだからです。
卸売業の人件費率とサービス業の人件費率がまったく違うことはご理解いただけると思いますが、この人件費率は、金融機関など「社外の人」が対象企業を業界比較するときなどに参考にする指標であり「当事者」である経営者にとって惑わされることはあっても参考にすることができません。
もう一つの理由は
「付加価値の計算が面倒だから」です。
一般的に「付加価値分配率(労働分配率)」の分母は「付加価値」と説明されていますが、その計算方法が経営者にとっては少々難しいので実用的ではありません。
これらに対して、「人的コスト比率」は、管理会計の「MA損益計算書」に表示されている「限界利益」と「人的コスト」のたったふたつの数字で計算できるのでカンタンです。
【アラート】
人的コスト比率の上限は40%!
上述したように「人的コスト」は、給与賞与以外に通勤手当や法定福利費、福利厚生費、教育研修費などを含む
「経営陣を除くメンバーに関わるコストの総額」です。
一方で「限界利益」は「売上高」から仕入れや外注などの「変動原価」を差し引いた利益です。
このふたつの数値から求める人的コスト比率の目安は「限界利益の40%以下」です。
これは、私の30年以上にわたる税理士時代の経験則ですが、中小企業において人的コスト比率が限界利益の40%を超える会社の大半が赤字か、黒字であってもどこかにしわ寄せが来ているケースがほとんどです。
私は、次のように観察しています。
- 20%以内=かなり優良!
(でも、月給安過ぎないか?) - 30%以内=優良!
- 40%以内=可もなく不可もなし
- 40%以上=ヤバそう・・・
- 50%以上=ヤバイっ!
(これでも黒字ならいいけど・・・)
【課題発見】
えっ?40%を超えてる?
もし、人的コスト比率が高く、40%に近い場合、あるいは超えてしまっている場合、2つの視点での確認が必要です。
人的コスト比率が高いと、ついつい「給料が高すぎる?」「人が多すぎる?」と「分子」に着目しがちですが、実は「分母」に課題があるのかもしれません。
つまり「限界利益が少ない」かもしれないのです。
管理会計のレポートをレビューしながら中小企業経営者と人的コストについて話をしていると「ウチは、人的コストが高いなあ」と聞くことがありますが、正しい見方は「ウチは、人的コスト比率が高いなあ」です。
本当の原因は「商品力」や「販売力」、つまり、分母の限界利益にあるかもしれません。
「人的コスト比率の改善」は、
「分子=人的コスト」と
「分母=限界利益」の2つの視点で分析しなければなりません。
これをさらに具体化すると、次の5つのカテゴリーでの課題抽出が具体的なアクションとなります。
- 商品力の課題
- 販売力の課題
- 限界利益率の課題
- 給与の課題(金額・人数)
- 賞与の課題(賞与の決め方)
【誤解解消】
「給料の3倍稼げ!」って?
若い経営者は聞いたことがないかもしれませんが、私の若い頃には「給料賞与の3倍稼げ!」とよく言われたものです。
これを「給料の3倍の売上」と誤解する人がたくさんいました。
お分かりのように、限界利益が10%の商品だったら、3倍の売上なんかではまったく足りませんよね。
このフレーズの意味は
「給料賞与の3倍のアラリ(限界利益)を稼げ!」です。
つまり、一部の特別な例を除いて、一般的には「給料賞与の3~4倍の限界利益が必要」なのです。
月給が30万円なら、必要となる「限界利益」は、その3倍以上の90万円~120万円になります。
限界利益率10%の商品やサービスなら「売上高」に換算すると900万円~1200万円ということになります。
これを上記の「人的コスト比率」で計算すると・・・
25%(=30/120万円)~約33%(=30/90万円)になりますが、給料に加えて、賞与、社会保険の会社負担額や福利厚生費、研修費などが必要になるので「人的コスト総額」は、「3倍」に少々上乗せして限界利益の30%~40%の範囲が望ましいということになります。
【要点整理】
基準は「限界利益」
MA損益計算書から、適正な「人的コスト比率」を確認するための具体的な方法を紹介しました。
- 人件費率ではなく人的コスト比率を確認すること
- 人的コスト比率の上限は限界利益の40%であること
- 人的コスト比率が40%を超えている場合は、限界利益と人的コストの両面で課題発見すること
改めて繰り返しますが、あくまでも基準は「限界利益」であって「売上」ではありません。
これで「スラスラ」話せますよね!


