「管理会計をやろう!」と決めたものの、どこから手を付ければいいのか?
そんな「管理会計の入口」で立ち止まっている中小企業の経営者の方のために
「設計→実装→運用のざっくりしたイメージ」を整理します。
「10人~200人規模の中小企業経営者」の「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを日々更新しています。
40年近く税理士として中小企業経営を支援し、経営計画や管理会計、組織作りを専門とするマネジメントコーチ・堀井弘三が、その現場で得た豊富な経験と知識に基づき執筆しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このWEBサイトについて」をまずご覧ください。
【前提確認】
経営者自身の「欲」と「覚悟」
「管理会計をやろう!」と心に決めた方には失礼と承知しつつ、改めて「ホンキ度」を確認しましょう。
「ホンキ度」が低いと、ほとんどの場合・・・
- 「思ってた以上にメンドウやなあ」
- 「ここまでやる必要ある?」
- 「なんか違うなあ・・・」
・・・など、途中で「負の感情」に阻まれるリスクがあるからです。

私の現役時代の「失敗」を振り返ると、
そのほとんどが
「経営者の最初の強い欲と覚悟」を
確認しなかったからと、
今さらながら反省しています・・・
「管理会計」は「経営者のための会計」であり
「もっといい会社」にするための仕組みそのもの。
この仕組み作りの主役は経営者自身であり、
経営者自身の
「どんなデータ」を
「どのように活用したいのか?」
「会社のナニを見たいのか?」という意思が強く反映されます。
「当事者の意思」がぼやけていると、周りの者は「どうしたいの?」と、途中で立ち止まってしまいます。
「めんどう」で
「てま」も「ひま」も必要なので
「満足いく仕組み」になるまでは根気も必要です。
私が、それでも「強くおススメ」するのは、
管理会計のプロトタイプ(試作バージョン)を目にした経営者は、ほぼ例外なく「これスゴイやん!」とビックリする、そんなシーンをたくさん見てきたからです。
試算表で売上と利益の「結果」しか見てなかった経営者が、利益の「原因」や「実質内部留保」が毎月チェックできる管理会計によって「未来予測」までできるようになる。
設計、構築段階ではメンドウがって、
疑心暗鬼にまでなってた経営者も
「管理会計、テマヒマかける値打ちがある!」と
掌を返したように意識が変わります。
「産みの苦しみ」
この先を読んでいただくにあたり
「産みたい欲」と
「苦しみの覚悟」を確認しておいてくださいね。
【様式確認】
管理会計のフォーマット
「管理会計」で「何が」出てくるか?
残念ながら「答え」までは出てきません。
でも「答えのヒント」はたくさん出てきます。
その「ヒント」を見て「答え」は自分で出す。
管理会計に慣れて、トライ&エラーを重ねていくと、遠からず「答えを出せる経営者」に進化します。
これは、典型的な「やたら会計に強い経営者」の考動パターンです。
その「ヒント」の中心となるのが、
「進化型BS(MA貸借対照表)」と
「進化型PL(MA損益計算書)」です。
「財務会計」の様式を
「管理会計」の様式に「変換」したもの。
百聞は一見に如かず。
まず、これから取り組むゴールの「見た目」を確認してみてください。
進化型BS=MA貸借対照表


私が「進化型」と名付けた「MA貸借対照表」は、従来の「財務会計の貸借対照表」が「流動」「固定」と区分しているのに対して、カテゴリ別に区分していることころが特徴です。
詳しくは、この記事で。


進化型PL=MA損益計算書


こちらも「進化型」と名付けた「MA損益計算書」。
従来の「財務会計の損益計算書」を、中小企業経営者のために「結果だけではなく、理由が分かるフォーマット」に組み替えたものです。
これも、詳しくはこの記事で。


いずれも「見慣れないフォーマット(様式)」だと思います。
なぜなら、このフォーマットは「私(堀井)が考えたものだから」です。
「管理会計」は、「経営者の自由なフォーマット」なので、
「これを作る」のではなく
「これを参考に作る」というための「参考様式」です。
誤解なきよう・・・。
【全体確認】
財務会計を管理会計に変換する
「進化型BS」や「進化型PL」を参考に御社の「オリジナルの(管理会計)レポート」を設計します。
その「オリジナルレポート」が、手元に届くまでの「全体フロー」を整理します。
今、やっている「財務会計」とは別に作る、という「二度手間」はかけられません。
なので「管理会計」は
「財務会計のデータを管理会計に変換する」という方法で進めます。
税務申告や金融機関への報告などのために財務会計は従来通り必要であり、管理会計は、それにとって代わるものではありません。
つまり「選択肢」ではなく「追加するかどうか?」の対象です。
具体的には、次のようなフローを毎月繰り返す仕組みになります。
- 翌月ナルハヤで「先月の月次処理」を完了する
- 従来の(財務会計の)試算表がアウトプットされる
- 試算表データを、エクセルやスプレッドシートで「管理会計レポート」に変換
- 実績と課題の確認
そのイメージはこれです。


【設計実務】
「欲しいもの」はナニか?
では、具体的に着手しましょう。
「経営者として、何が見たいか?」から始めます。
Step1
やりたいことのリストアップ
もし「思いつかない」のであれば、試算表や決算書を眺めながら「ダメ出し」をする方法も「ひとつの手」ではあります。
これでは・・・
- 「損益分岐点」がわからない
- 「売上高」を見ても「拠点別」「事業別」などの内訳がわからない
- 「売上総利益」が、イメージしてる「粗利」とは乖離している
- 「人件費率」がわからない
- 「給与手当」も「正社員」と「パート」の内訳が知りたいなあ
- 「広告宣伝費」も「打ち手別」に見たいなア
- 「長期借入金」って、借り過ぎ?まだ余裕?わからん・・・
- 「商品・製品」って、この「在庫」に違和感があるなあ
・・・と、いう具合です。
ちなみに、これらは「会計処理」をちょっと工夫するだけでカンタンに毎月見ることができます。
このような「ダメ出し」「リクエスト」を、試算表や決算書に「赤ペン」で書き込んでいきましょう。
そして、この「赤ペン入りの試算表・決算書」をいつもカバンに入れておいて、思いついたらどんどん追記していく。
「もう、これ以上はないな」と思えるまでアップデートを続けましょう。
この「赤ペン入りの試算表・決算書」に書き込んだ内容を整理すると「管理会計でやりたいことリスト」が出来上がります。
Step2
フォーマットの試作
「やりたいことリスト」ができれば、それをエクセルやスプレッドシートで「フォーマット」にしてみましょう。
もちろん、この段階は「見た目の設計」なので、数字や計算式は不要です。
試算表なら「売上高」という1行で表示されていますが、ここで試作するフォーマットは次のようになっているはずです。
- 東京売上高 ****
- 名古屋売上高 ****
- 大阪売上高 ****
- 売上高合計 ****
これで
「欲しい貸借対照表」と
「欲しい損益計算書」の「ラフ」の出来上がり。
次は、どうすれば、このふたつの「欲しいもの」を出せるようになるか?
【構築実務】
「欲しいもの」を出す仕組作り
「欲しいモノ」がハッキリすれば、
次はそれを「出す仕組み作り」です。
順を追って見ていきます。
Step1
関連者のコンセンサス
「仕組み作り」は、ひとりでできません。
経理の担当者や、顧問税理士、さらに、部門長など関連するメンバーの「賛同」が必要です。
上記で作った「欲しい貸借対照表」と「欲しい損益計算書」を使ってプレゼンをしましょう。
「もっといい会社にしたいので、毎月、このレポートが欲しい」と伝えます。
「よろしく!」という一言で済むトップダウンなチームもあれば、そうでないチームもあるでしょう。
でも、いずれにしても、おススメするのは「プロジェクト化」です。
関連する人たちの協力が欠かせないので、そのために「経営者本人から、関連する人たちへ想いを伝えること」がとても重要です。
例えば、経理担当者だけに依頼すれば、その担当者が、他部門へ協力要請をする負担を負うことになります。



社長が言えば「了解!」といい顔するくせに、経理担当者が言うと
「そんなメンドウなことするの?」と
露骨にイヤな顔をする人がいるかも・・・なので。
だから、最初の段階で
「みんなで、これを実現するぞ!」という
「空気作り」が大切です。
Step2
勘定科目の全面見直し
「プロジェクト」が立ち上がって、最初の実務は「勘定科目の全面見直し」です。
多くは「財務会計のための勘定科目」なので、
これを「管理会計のための勘定科目」に置き換える必要があります。
経営者自身が「欲しい情報」を得られる経理処理がされているか?
「総勘定元帳」を丁寧に熟読し、現状の勘定科目の一つ一つについてチェックしていきます。
必要であれば名称変更、分割、新設等をして勘定科目体系をリニューアルし、それに伴うルール作りのステップです。
制約はありません。
「知りたい数字」「知りたい情報」が得られるように自由に決めます。
勘定科目が財務会計のままでは、管理会計の効果は半減どころかまったくの台無しになることもあるので、この「勘定科目の全面見直し」は丁寧に行ってください。
簡単な例示をしておきますが、詳しくは別記事を参考にしてください。
- 「旅費交通費」は
「営業交通費」「海外渡航費」「通勤交通費」に分割 - 「通信費」は
「郵便通信費」「ネット通信費」「携帯通信費」に分割 - 「荷造運賃」は
「商品発送費」「事務発送費」に分割 - 「損害保険料」「租税公課」「修繕費」の中の車両関連のコストは
「車両費」に集める
Step3
変動費と固定費の区分
「シン勘定科目」になったら、
次は「変動費」と「固定費」に分類します。
「変動費」とは、売上高に「連動するコスト」のことであり、「変動するコスト=固定していないコスト」という意味ではありません。極端に言えば「売上がなければ発生しないコスト」のことです。
「進化型PL」の精度を高めるために、コストの科目をチェックし、変動費にフラグを立てていきましょう。
この際に「変動要素と固定要素が混在している科目」があれば、「変動広告費」「固定広告費」というように、勘定科目を分割することを検討します。
【試行実務】
「欲しいもの」に近づける
次は「シン勘定科目」で集計して
「これがホントに欲しかったものか?」の確認作業です。
テストランを繰り返し「精度」を高めていきます。
Step1
当期データをシン勘定科目に修正
次は、既存の会計データを「シン勘定科目」に修正してくという少々面倒なステップです。
ただ、最近の会計ソフトには「置き換え」など便利な機能を備えているものもあるので、経理担当の方の協力を得ながら進めましょう。
たとえば、
「通勤交通費」を新設したならば
「旅費交通費」として処理していた通勤手当を過去にさかのぼって抜き出して、新設した「通勤交通費」に修正するという具合です。
また、もう期首から10カ月も経過していて、その負担が大きい、というような事情であれば
- 今期は、従来通りの処理を継続する
- 来期からは、新しい科目で処理をする
・・・ということも検討します。
Step2
やっと「管理会計」に変換
上記までのステップで
勘定科目を見直して一新しました、
過去データも修正しました。
でも、この段階では、まだ「財務会計のフォーマット」しかアウトプットできません。
次のステップでは、いよいよ「管理会計のレポート」の試作に取り掛かります。
実務的には、エクセルやスプレッドシートを使って・・・
- 「sheet 1」に、会計ソフトからエクスポートしたCSVファイルをコピペするシートを作成
- 「sheet 2」には管理会計のフォーマットを作成し、「sheet 1」のデータを読み込むように作成
Step3
違和感を修正して仕上げていく
ここまで順調に進めば、手元には「変換されたMA損益計算書とMA貸借対照表」があります。
ただ、この段階では「違和感」を感じる人が少なくありません。
なぜなら、初めて見るフォーマットで慣れていないので、止むをえません。
私の経験上、慣れるまで3~6か月くらいかかると思いますが、その違和感と言うのは・・・
- 「これって、固定費じゃないな・・・」
- 「もっと細かく科目を分けた方がいいな・・・」
- 「**の売上比率も確認したいな・・・」
- 「そもそも月ズレが激しいなあ・・・」
・・・というような「経営感覚とのズレ」が大半です。
それらを一つ一つ解決するように、「シン科目体系をアップデート」したり「フォーマットのアレンジ」を繰り返すことで「経営感覚にフィットしたオリジナルのフォーマット」に近づいていきます。
しばらくは地道なアップデート作業を行いましょう。
これで「毎月、管理会計のレポートを出す仕組み」が整いました。
次は、「運用」です。
【運用実務】
月次決算と経営会議
管理会計によるレポートをアウトプットする仕組みが整えば、次は「月次ルーティン」を回していく運用ステップです。
「もっといい会社」に成長するために会計データをどのように活用するか?
その答えは、ふたつ。
- 月次決算を実践する
毎月、なるべく早く「決算」を行う - 月例経営会議を開催する
毎月、日時を決めて主要メンバーと共に振り返る。
なお、経営会議で行うのは、伝統的なフレームワーク「PDCA」。
- P:Planning
- 目標や予算を決める
- D:Do
- 目標や予算を意識した経営活動
- C:Check
- 管理会計による「予実確認」
- A:Action
- 課題解決策の具体化と考動
毎月「経営会議」を開催し、実績に加えて「対目標差」や「対予算差」を関連者を交えて確認、共有する、という繰り返しを習慣化しましょう。
この「毎月の振り返り」だけでも、「あるとき~」「ないとき~」の差を実感できると思います。
ちなみに・・・
まだ小さい会社なので「経営会議」なんて、まだまだ、という経営者がいます。
私の答えはいつも
「一人会議」を「毎月決めた日時に開催」して!です。
【要点整理】
さあ、はじめましょう!
さて、どうですか?
管理会計の「設計→構築→試行→運用」の流れをざっくり整理しました。
まず「欲」と「覚悟」を確認する。
次に「欲しいもの」を明確にする。
- 試算表に赤ペンでダメ出し
- フォーマットを試作
そして「出す仕組み」を作る。
- 関連者のコンセンサス
- 勘定科目の全面見直し
- 変動費と固定費の区分
テストランで「精度」を高める。
- 違和感を修正
- 経営感覚にフィットするまでアップデート
最後に「運用」を習慣化する。
- 月次決算
- 経営会議(一人会議でもOK)
「めんどう」で「てま」も「ひま」もかかる。
でも、完成したとき「これスゴイやん!」と必ず思える。
「産みの苦しみ」の先には「育てる喜び」が待っています。
お役に立ちますように!

