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人材採用において「能力」を見極めていますか?
ついつい「スキル」が気になって「能力」に無頓着になっていませんか?
この「スキル偏重」が、採用後のミスマッチや早期離職の原因となっているので要注意です。
この「スキル」と「能力」の違いを例えると・・・
- 「スピードは出るけれど、燃費が悪く、周囲に排気ガスをまき散らすスポーツカー」と
- 「必要な時に加速でき、燃費も良く、環境にも優しいハイブリッドカー」です。
スポーツカーは、短期的には目を引くかもしれませんが、 長期的には燃料費や整備費用がかさみ、 さらに排気ガスで環境を悪化させてしまう。 一方、ハイブリッドカーは、必要な時には十分な性能を発揮しながら、 長期的なコストも抑えられ、さほど手もかからず、環境に優しい。 「スキル」と「能力」は、まさにこの違いです。
本稿では、人材採用にあたって「能力」をどう見極めるか?という「人材育成」にも通じる大切な視点について整理します。
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【能力の定義】スキルは能力の一部でしかない
まず、本稿の主旨である「能力」を定義しておきます。
「能力」=「貢献する力」-「依存する心」
「貢献する力が10」で「依存する心が2」であれば「能力は8」という具合です。
私は、その人材の「貢献する力」と「依存する心」のバランスで「能力」を測っています。このバランスが「優秀な人材」を見極めるためにとても重要、かつ効果的だからです。
「能力の高い人材」とは、属するチームやコミュニティ、さらに社会に対する貢献力が高く、さらに、自立心が強く、他者への依存や負担をなるべく避けようとするマインドをもっている人材です。言ってみれば「期待されている役割を果たすための自己研鑽を怠らず、周囲への依存とは反対に、協力や支援を惜しまない。トラブルが生じても、まず自責で振り返ることができる」タイプ。
反対に「能力の低い人材」とは、貢献力が低く、他者への依存心が高く、他責を求めるマインドの持ち主で、簡単に表現すると「自分が努力をする前に、周囲に協力や支援を求め、ミスがあっても責任回避する」タイプ。
両者の違いは明確です。
この定義において「スキル」は、「能力」の一部です。
あえて表現するなら「せっかくの高いスキルを、貢献ではなく自己満足や自己保身のために発揮するタイプ」は、「使えない人材」です。
逆に「スキル」は発展途上であっても「貢献マインド」が高い人材や、「依存・他責マインド」が低い人材は、いわゆる「伸びしろのある人材」で、今後に期待することができます。
「能力」の2つの要素である「貢献力」と「依存心」は、その人材がどのような考え方や価値観を持っているか?という「心=マインドセット」の現れです。
この2つの要素をもう少し深掘りしてみます。
貢献力:誰かの役に立ちたいという「欲」
「貢献力」の本質は、誰かの役に立ちたいという「欲」です。役に立たなければならないという「義務」よりもっと強いマインドです。
誰かの役に立ちたい、チームの役に立ちたい、ひいては顧客、取引先、社会など、自分の周囲の誰かの役に立ちたいという「動機」で仕事をする人材です。
また、このタイプの人材は「役に立つことの喜び」を感じることができるので、チームの他のメンバーの支援や協力、応援も惜しみません。
このような「貢献力」が高い人材は、すべての経営者が求める人材像ではないでしょうか?
上述もしたように、「スキル」は発展途上であっても、この「貢献意欲」のある人材は、まだまだ成長する余地が期待できます。
依存心:誰かに頼りたいという「欲」
「依存心」もマインドの現れです。
「依存心」が強いと、「他者に任せたい」「自分で考えたり動いたりすることを避けたい」というよな、簡単に言うと「楽をしたい」という「欲」が、成長や貢献の障害となってしまいます。
また、このタイプは、問題が発生した際にも「イヤな思いをしたくない」という気持ちから責任回避が多く、「他人のせい」「環境のせい」にしてしまいます。
もし、充分な「スキル」を持っていたとしても、この「依存心の強さ」が、それを「宝の持ち腐れ」にしてしまいます。
さらに、「自分は悪くない」「誰かに依頼すればいい」というマインドが強いため「のびしろ」も期待できません。
このような人材に頭を悩ました経験はありませんか?
【スキルとの関係】能力を発揮するための手段
実は、この「能力」と「スキル」の話は、本質的に「経営脳の5つのレイヤー」と同じ話です。
経営脳の構造においても「スキル」は、第4レイヤーであり、ベースは第1レイヤーの「マインドセット」です。
「スキル」がどれだけ高くても、その足元である「マインドセット」、つまり考え方や価値観が不十分であると「スキル」は発揮できない、という構造です。
参考までに「経営脳」のそれぞれについて再掲しておきます。
Layer1:マインドセット
これらは、経営者を前提とした例示であり、一般メンバーに求めるものとは若干変わるかもしれませんが、概ね同様に考えてもいいでしょう。
「能力」を目的とするならば、「スキル」は手段です。
特に、成長志向や使命感をタテマエではなく、実現するための手段として「スキル」が必要であり、また、その「スキル」を高めるために、ポジティブ思考や、役割認識に基づく学習意欲などの「マインドセット」が欠かせないという関係です。
繰り返しますが、これらの「スキル」が充分であっても、「マインドセット」にある「素直さ」や「倫理観」が欠如していれば、その「スキル」は正しく機能せず、その「個」のチカラが、チームのパフォーマンスに反映することがないどころか、場合によっては悪影響を及ぼすことさえあることに注意しなければなりません。
【採用実務】能力を見極めるための質問例
では、どうすれば「能力=貢献力-依存心」を見極めることができるか?ですが、お察しのとおり簡単ではありません。
しかし「採用の成否」は、チームビルディングにおいて中長期的に大きく影響します。
できる限りはトライし、また、その繰り返しによって「見極め力」を高めていきましょう。
以下、「能力を見極めるための質問例」をリストするので参考にしてみてください。
はい、「貢献力」と「依存心」の両面から見極めるための質問リストを作成しました。
貢献力を見極めるための質問
これまでの経験
- 「今までの職場では、誰に対してどのような貢献をしてきましたか?具体的なエピソードを教えてください。」
- 「チームの成果のために、自発的な取り組みはありましたか?」
- 「今までの仕事で最も嬉しかった経験や、やりがいを感じた経験を教えてください。」
- 「今までの経験の中で、最も困難だった経験や苦労した経験を教えてください。」
- 「今までの職場で、チームワークのために最も配慮していたことや注意していたことは何ですか?」
- 「チームワークにおいて、最も苦労したことを教えてください。」
- 「大切な人にプレゼントをするときに、最も気遣っていることは何ですか?」
価値観
- 「当社の企業理念や経営理念について、最も共感できることは何ですか?」
- 「あなたにとって仕事とは何ですか?」
- 「あなたにとって成長とは何ですか?」
- 「仕事において最も大切にしていることは何ですか?」
成長意欲
- 「現在のスキルや知識で足りないと感じている部分は何ですか?」
- 「それを補うために、具体的にどのような行動を取っていますか?」
- 「スキルを高めるために、意識していることは何ですか?」
- 「未経験、未体験の仕事の指示や依頼があったとき、どのように受け止めますか?」
- 「成長できたと実感できた経験を教えてください。」
依存心を見極めるための質問
問題対応の姿勢
- 「予期せぬ問題が発生した時、どのように対処しますか?」
- 「上司や同僚と意見が異なる場合、どのように対応しますか?」
- 「失敗したとき、落ち込みますか?」
- 「あなたが関わる仕事でトラブルが生じたとき、真っ先に何が思い浮かびますか?」
- 「納期に間に合わないと感じた時、どのような行動を取りますか?」
- 「仕事において、他者に迷惑を掛けたことはありますか?具体的なエピソードを教えてください」
- 「チーム内で、意見が対立したとき、どのように対処しますか?」
自己認識
- 「あなたの強みと弱みを教えてください。」
- 「どんなときにストレスを感じますか?また、そのストレスにどう対処しますか?」
- 「周囲からどのような評価を受けることが多いですか?」
責任感
- 「あなたにとって、責任とは何ですか?」
- 「目標が達成できなかった経験がありますか?具体的なエピソードを教えてください。」
- 「重い責任はキライですか?」
回答を評価する際のポイント
以上、採用面接における質問サンプルをリストしましたが、もちろん、これですべてではありません。
状況に応じて、臨機応変にアレンジして活用してみてください。
大切なことは、これらの質問の目的は「能力を見極めるための情報を得ること」です。
応募者の回答については「正しく受信」できるように次のような視点に注意しましょう。
- 具体性:抽象的な回答ではなく、具体的な経験や行動が語られているか?あるいは、数値や成果による具体的かつ信憑性のある内容であるか?
- 視点:「自分事」として語られているか?「他人事」のような語り口ではないか?
- 態度:前向きで建設的であるか?積極的な可能志向で語られているか?
- 一貫性:複数の回答に矛盾がないか?また、価値観と行動が一致しているか?
面接の雰囲気づくり
「スキル」の見極めとは異なり「能力」の見極めは「人となり」の見極めでもあります。
ビジネスライクに「一問一答」のようなやり取りではなく、上記の質問を効果的に含む「座談会」のような雰囲気にすることで、より「ホンネ」に迫ることができます。
応募者が、リラックスできるように、面接の場所や、また、面接担当者は、表情や態度、語り口などに配慮しましょう。
【経営者の視点】能力が能力を引き寄せる
最後にもうひとつ大切なことを書き加えておきます。
会社側に「人材の選択権限」があるのと同じように、応募者には「会社の選択権限」があります。
言い換えれば、会社側が「人材を見極めたい」と思うのと同じように、優秀な人材ほど「経営者を見極めたい」と思っています。
能力が高い優秀な人材に「ぜひ来てほしい!」とどれだけ望んでも、その人材が辞退することがあります。その辞退の理由は様々ですが、その中のひとつは、少々厳しい話ですが「経営者の能力」です。
「どんな経営者なんだろう?」と応募者が考える中で、応募者の「貢献力・依存心」と経営者の「貢献力・依存心」に差がある場合、その人材は辞退を選択するかもしれません。これは決して厳しい話ではなく、経営者として自らの能力を見直す貴重な機会です。
望む人材の「能力」にマッチする、経営者の「能力」が必要なのです。
これが「能力が能力を引き寄せる」の意味です。
経営脳の自主トレによって自分自身の「貢献力と依存心」と向き合い、もし課題があるなら、それを解決することで、さらに能力の高い人材の採用可能性が高まります。
経営者としての成長が、優秀な人材を引き寄せるのです。
経営者の能力と人材の能力は共鳴することを忘れないようにしましょう。
まとめ:採用力強化は最優先課題
さて、どうですか?心当たりはありましたか?
人材採用において「スキル」より「能力」の見極めがとても大切であることを整理しました。
「期待されている役割を果たすための自己研鑽を怠らず、周囲への依存とは反対に、協力や支援を惜しまない。トラブルが生じても、まず自責で振り返ることができる」という「能力の高い人材」。
この「能力」というテーマは「人材育成」にも通じる話であり、中長期的なチームパフォーマンスに大きく影響するテーマです。「応急処置」することなく、丁寧に「能力を見極めるチカラ」を高めましょう。
ますます「人手不足」が深刻になっていく模様です。採用力強化の重要性は益々高まっています。
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