経営計画の実務|1年が長いならクォーター(四半期)で区切る

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


「経営計画」が途中で希薄化し、結果として「絵に描いた餅」になっている中小企業は少なくありません。

「計画がフェードアウトする」「目標の未達が多い」「先送り体質である」などに心当たりはありませんか?

私は、毎期目標を掲げるものの未達を繰り返しているクライアントには、「クォーターマネジメント」を試してみないか?と提案することにしていますが、この手法によって、目標達成率が向上し、年間目標もクリアしやすくなります。

本稿では「クォータマネジメント」のポイントや注意点を整理します。

本稿は、「中小企業向|経営計画の策定と運用、3つの新視点」の補足記事です。

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【検討理由】なぜクォーターマネジメントか?

1年を4つのクォーター(四半期)に分け、それぞれに目標を小分けするクォーターマネジメントは、1年という長期の計画を段階的に実行し、リアルタイムで進捗を確認するための手法です。

中小企業を観察していると、前述したように、年間の計画がいつの間にか先延ばしになることが少なくありません。クォーターマネジメントは、この問題を克服するためのフレームワークです。1年間の大きな目標を、3カ月ごとの小さなステップに落とし込むことで、達成しやすくなります。

この「四半期」であるクォータマネジメントを検討する理由は「1年」のデメリットを解決するためです。

1年は長くフェードアウトするから

公私に関わらず、年初に立てた目標が時間の経過とともに希薄化し、時にはフェードアウトしてしまった経験は誰にでもあると思います。

いざ新年度が始まると、想定外が重なって計画の前提条件が変わってしまったり、また、経営者の考え方や気持ちが変化することもよくあることです。

そんな「言い訳」によって当初の計画が希薄化し、それを繰り返すと「1年は長いもの」と考えるようになってしまいます。

計画とのズレが大きくなるから

経済状況の変化、顧客ニーズの変化、社内リソースの変化など、さまざまな変化が1年を通して起こりますが、それが想定外の場合に、計画と実際にはズレが生じます。

当初計画時に想定していなかったこれらの経営環境の変化があり、その影響が大きければ、柔軟に計画修正を行えばいいのですが、「そのまま」にしているケースも散見されます。

その理由を観察していると、多くの場合は「いちいち修正するのは面倒・・・」「どうせ、また変わるから・・・」と、すでに経営者の「心の火」が消えかけていることがほとんどです。

計画通りにコトが進み、達成感や充実感を感じることができるときはモチベーションもテンションも高くキープできますが、その真逆の場合「計画なんて立てても意味がない」という「行き当たりばったり経営者」になってしまうことすら少なくありません。

【メリット】目標達成の確率が上がる

クォーターマネジメントの最大のメリットは、目標のリアリティー=現実感をより強く感じることができることです。

不思議なものですが、目標を3カ月ごとに小分けすることで、「いつかやろう・・・」が「今やろう!」と達成意識を強くすることができます。

例えば、年末までに体重を12キロ落とすという目標。「1年間で12キロ」というイメージと「3カ月で3キロ」というイメージを比べると「先送りしづらくなる」と思いませんか?「1年間」という時間感覚は「遅れても、まだリカバリする時間がある」と心が緩みがちです。

「クォータマネジメント」の狙いはこれと同じです。

目標を小分けすることで「達成しやすいハードルに下げる」と同時に「先送り」を防ぎ、「小さな成果」を積み重ねることで「大きな成果」を達成する確率を上げようとする取り組みです。

経営者が、この習慣を身に付けることで本来の「計画経営」を取り戻し、「行き当たりばったり経営」から脱出することが可能です。

【注意点】2つの重要ポイント

Point1:四半期は中長期の細分化である

クォーターマネジメントの基本は、四半期ごとの目標設定と成果評価ですが、「3か月だけの目標設定」ではありません。

中長期目標→短期(今期)目標→四半期目標というように、中長期目標をクリアするために、行動計画をブレークダウン(細分化)するという考え方(手法)です。

例えば、「3年後の会社のあるべき姿」を設定し、そのために「今期はどこまで進むべきか」と中間目標としての短期計画を明確にし、それをさらに四半期に小分けします。

その四半期に小分けした目標は、約90日間で実行、達成する目標ですが、もしこの段階で「高すぎる」「低すぎる」というように、リアリティに欠けるようであれば、再び「中長期目標」に立ち戻り必要な修正を加えます。

この「四半期と中長期の往復」によって、計画のリアリティー(解像度)が増すので、「夢物語」や「大風呂敷」になることを防ぐことができます。

Point2:行動計画と数値計画はセットである

目標をクリアするために「行動計画」と「数値計画」の両方が必要であることは言うまでもありません。

いずれかが欠けると、「計画っぽい」ものは出来上がりますが、それは「計画」ではありません。

売上や利益などの会計的な数値に加えて、顧客数やメンバーの評価スコアなど、測定可能な「数値計画」を設定することで、目標の達成度を客観的に評価できるようにします。

また、同時にその数値目標をクリアするために、何をすべきか?何をすべきでないか?という「行動計画」を明確にします。

数値計画と行動計画をセットにすることで「結果評価」と「行動評価」が可能になり、課題発見やその後の課題解決の貴重な情報を得ることが可能になります。

【効果効能】人材育成と経営者の成長

人材育成:小さな成功体験の積み重ね

クォーターマネジメントは、メンバーの成長にも有効です。

四半期ごとにスキルアップや新しいチャレンジの目標を個々に設定し、その評価とフィードバックを行います。

メンバーのスキルアップ目標も、上述の「1年で12キロ」より「3ヶ月で3キロ」と同様、小分けにした方が「先送り癖」を防ぎ、達成確率を上げることが可能です。

この小さな成功体験の積み重ねが人材育成のとても効果的です。

経営者自身も他人事ではない

経営者自身にとってもクォーターマネジメントは有効です。

上記のメンバーに対する効果は、経営者も例外ではありません。

四半期ごとに自分の学びやスキルアップの目標を設定し、その達成状況を振り返ることで、経営者としての自分を向上させる習慣が身につきます。

【実践】ステップ別チェックリスト

クォーターマネジメントを実践するための具体的なステップを以下にまとめておきます。

Step1:年間目標の設定

  • 中長期目標を設定したか?
  • 短期(今期)目標を決定したか?
  • 年間目標を「数値計画」「行動計画」のセットで整理したか?

Step2:四半期ごとの小分け

  • 年間目標を四半期ごとに分割し、3カ月のスケジュールに落とし込んだか?
  • 「行動計画」を「個人別」に細分したか?
  • マネジメント(管理)会計の予算に登録したか?

Step3:振り返りと軌道修正

  • 月次決算の「予実対比」によって「数値計画」の進捗状況を確認したか?
  • 「実績」を分析し「行動計画」の実施状況の課題を抽出したか?
  • 次の四半期に向けて、必要な計画修正を行ったか?

【まとめ】目標達成確率が飛躍的にアップする

さて、どうですか?「クォータマネジメント」について整理しました。

このクォータマネジメントは、目標達成確率が飛躍的にアップするので、「計画がフェードアウトする」「目標の未達が多い」「先送り体質である」などに心当たりがある経営者、会社にとってとても有効な手法です。

「中長期と四半期の往復」によって短期長期のバランスに注意しながら実施してみましょう。

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