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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
この記事では、マネジメント会計(管理会計)を活用して、収益性改善に取り組む際に効果的な「損益計算書の黄金比率」について、詳しく紹介します。
「黄金比率」とは「理想のPL=あるべき損益計算書」の構造を意味します。
「もっと儲かる会社にする」ために「収益構造の課題解決」が必要ですが、課題を解決するためには、そもそも「課題は何か?」を鮮明にしなければなりません。「課題」とは「あるべき姿」と「現状」のギャップですが、「あるべき損益計算書」と「現状の損益計算書」の比較によって「損益計算書の課題」が明らかになります。
この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。
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【様式変換】PLを “MA損益計算書” にアレンジ
「一般の損益計算書」では、会社の収益構造を正しく把握することが困難なので、それをマネジメント会計(管理会計)の進化型PLである「MA損益計算書」に変換するところから始めます。
(参考記事)管理会計|中小企業経営者のための【進化型】MA損益計算書
【黄金比率】PLの理想形=70+10+10+10
「一般の損益計算書」を「MA損益計算書」に変換したら、その「理想形」の確認です。
私は「損益計算書の黄金比率」とよんでいますが「限界利益を100」とした場合、各区分の理想の比率があり、それは「70+10+10+10」になっています。
限界利益を100とする
「MA損益計算書」の主役は売上高ではなく「限界利益」です。売上を拡大しても利益が出なければ意味がありません。売上規模に惑わされることなく「儲かる会社」を作るためには利益を目的にしなければなりません。売上は、そのための「手段」に過ぎないので、マネジメント会計(管理会計)においては、限界利益をベースにして、収益構造を明らかにします。したがって「黄金比率」を計算するときのベースは「100」になります。
創造付加価値の理想は30%以上
「限界利益」から「事業コスト」を控除して計算する「創造付加価値」は、限界利益の30%以上が理想です。30年以上にわたり税理士として、のべ数千社の損益計算書を見てきた私の経験則ではありますが、黒字企業の大半は「創造付加価値は30%以上」です。
この比率を言い換えれば「事業コストは、限界利益の70%以内に収める」ということでもあります。例えば、100万円の限界利益を獲得するために、事業コスト(人的コスト、設備コストなど)が70万円以上必要なら、その事業は「儲けにくい構造」ということになります。
(参考記事)管理会計の進化型MA損益計算書|事業コストの内訳
事業利益の理想は20%以上
事業利益は、創造付加価値から経営コストを控除して計算する利益です。「事業外損益」や「営業外損益」がなければ、(例外を除き)「一般の損益計算書の経常利益」と一致するこの「MA損益計算書の事業利益」は、限界利益の20%以上が理想です。
事業利益の必達ラインを20%を設定したとき、下記のようなバリエーションが考えられます。
標準 | 高収益 | 低収益 | |
---|---|---|---|
限界利益 | 100 | 100 | 100 |
創造付加価値 | 30 | 40 | 20 |
経営コスト | 10 | 20 | 0 |
事業コスト | 20 | 20 | 20 |
上記の「黄金比率」は、ひとつの「標準形」でもあります。
創造付加価値が30%であれば、経営コストの上限は10%ということになりますが、標準以上の創造付加価値を稼得していて、仮に40%であれば、経営コストの上限は20%ということになり、逆に、十分な創造付加価値が稼得できず、20%だとすれば、経営コストの「取り分」はなくなってしまいます。
経営コストの大半は「役員報酬」ですが、この比率を応用すると「必達限界利益は、必要とする役員報酬の10倍」といえます。例えば、年間1000万円の役員報酬が必要であれば、限界利益の必達は1億円、限界利益率を20%とすると、必達売上目標は5億円ということになります。
売上高 | 5億円 |
限界利益 | 1億円 |
創造付加価値(30%) | 3,000万円 |
経営コスト(10%) | 1,000万円 |
事業利益(20%) | 2,000万円 |
(関連記事)管理会計の進化型MA損益計算書|経営コストの実務
税引後純利益の理想は10%以上
上記の事業利益は「一般の損益計算書の経常利益」と一致し、また、臨時的な損益等がない場合は、この「事業利益」が「税引前純利益」となります。つまり、課税対象です。この「事業利益」に対して「(大雑把ですが)半分税金」と仮定すると、税引後純利益は「限界利益の10%」ということになります。
事業利益が20であれば、半分の税金を差し引いて10残る、という計算です。
【内部留保】10年で1年分の限界利益が貯まる
上記の税引後純利益は、会社の内部留保に加算されます。
つまり「黄金比率」によれば「毎期、限界利益の10%が内部留保される」ので、これを10年続ければ「限界利益の1年分相当の内部留保が蓄積される」ことになります。
1年分の限界利益に相当する内部留保があれば、余程のことがない限り会社は安全です。当然、貸借対照表(バランスシート)も健全な状態になるので、銀行等との交渉においても有利に進められるでしょう。
この「内部留保」に着目して課題発見・課題解決をするための指標が「黄金比率」であり、私が管理会計の進化型PLである「MA損益計算書」を推す理由でもあります。
(関連記事)管理会計フル活用|内部留保を高める中小企業の重要KPI-8選
【まとめ】あるべき損益計算書からの課題発見
マネジメント会計(管理会計)を活用して、収益性改善に取り組む際に効果的な「損益計算書の黄金比率」について紹介しました。
「もっと儲かる会社にする」ために「あるべき損益計算書」と「現状の損益計算書」の比較し「損益計算書の課題=収益構造の課題」が明らかになります。
そのため、常に黄金比率を意識した経営をしましょう。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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