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  2. 【研究レポート】中小企業経営者論
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  4. 1部-前提編|2章|確率マネジメントの概念

1部-前提編|2章|確率マネジメントの概念

2026 1/03
2025年11月9日2026年1月3日
堀井弘三

前章で整理したように、オーナー型中小企業では所有と経営の一致という構造により、あらゆる経営判断が経営者個人に集中している。

したがって、中小企業を最適化するとは、経営者自身の考動を最適化するに他ならないと示した。

では、経営者の考動をどう最適化するのか。

その結論は「成功確率を高める考動」に整えることである。

未来は常に不確実であり、経営に絶対の正解は存在しない。

しかし、成功確率を高める考動の設計は可能である。

本章では、その実践的な視点のひとつとして「確率マネジメント」という概念を提示する。

INDEX

1節:確率管理という経営の本質

経営者は、不確実な未来に対して、日々意思決定を繰り返している。

どれほど経験を積んでも、未来を完全に予測することはできない。

「必ず成功する絶対的な正解」なんてない。

したがって、経営者は常に「より良いと思う選択肢」を選び続けている。

みんな「よかれと思う選択」をしているのだ。

しかし、持続的に成果を得ている経営者と、そうでない経営者がいる。

その差は、成功確率を上げ、失敗確率を下げるための考動の質にある。

すなわち経営とは、日々の考動を通じて「確率を制御する営み」と言える。

期待する成果の確率を高め、望まない結果の確率を下げるための制御。

本稿では、この考え方を「確率マネジメント」と呼ぶ。

一般に「会社をマネジメントする」と言うが、「確率をマネジメントする」と言い換える方が現実的である。

この視点に立てば、経営能力とは「確率のマネジメント能力」を指すことになる。

2節:確率マネジメントの5段階プロセス

確率マネジメントを実践している経営者の考動を分析すると、次の5段階の循環プロセスに整理できる。

  • 段階1:目標設定フェーズ
    • 目的を明確に定義する。
    • 進捗と成果を測定するために、定量的・定性的な目標を具体化する。
  • 段階2:分析フェーズ
    • 成功確率を上げる要因を特定する。
    • 失敗確率を下げる要因を特定する。
    • 確率を最適化するための課題を抽出する。
  • 段階3:計画フェーズ
    • 抽出した課題解決の優先順位を設定する。
    • 課題解決のための計画を策定する。
    • 中期経営計画および短期経営計画として文書化する。
  • 段階4:実行フェーズ
    • 短期経営計画を実行に移し、実務における考動の軸とする。
  • 段階5:評価フェーズ
    • 実行結果をモニタリングし、計画との誤差を検証する。
    • 必要に応じて前段階に戻り、修正や再設計を行う。

これらのプロセスは直線的な手順ではなく、結果に応じて循環する可変型のサイクルである。

この循環の量と質を高めるほど、成功確率は上昇する。

3節:確率マネジメントの意義

確率マネジメントの意義を2つに整理する。

(1)試行錯誤の質的転換

確率マネジメントは、感覚や直感に頼る試行錯誤という偶然の領域から、根拠のある試行錯誤という意図的な領域へと移行させる。

この転換により、成功の再現性が高まり、失敗の再発防止が進む。

結果と原因の因果関係の解像度が上がるので、「運」の話が少なくなっていく。

(2)考動最適化の視点転換

この視点を持つ経営者は、確率を最適化するため、自己の考動を最適化することに積極的である。

自分自身の考動が最適化されるほどに、成功確率が上昇し、失敗確率が低下することを体感しているからである。

その視点は、「どうすれば確率が良くなるか」ではなく「どうすれば確率を良くする自分になれるか」である。

4節:まとめ

本章では、経営者の考動を最適化するための視点として「確率マネジメント」という概念を提示した。

  • 経営に絶対の正解は存在しない。経営とは、期待する成果の確率を高め、望まない結果の確率を下げる営みである。
  • 確率マネジメントは、目標設定、分析、計画、実行、評価という5段階の循環プロセスで構成される。
  • このプロセスの量と質を高めるほど、成功確率は上昇する。
  • 確率マネジメントの意義は2つ。感覚に頼る試行錯誤から根拠ある試行錯誤への質的転換と、「どうすれば確率を良くする自分になれるか」という自己最適化の視点転換である。

確率マネジメントを実践する主体は経営者自身である。

次章では、その経営者がどのように成長していくのか、その内面的・構造的なプロセスを整理する。

【中小企業経営者論】もくじ

1部:前提編
  • 1部-前提編|1章|中小企業の特性と経営者論への帰結
  • 1部-前提編|2章|確率マネジメントの概念
  • 1部-前提編|3章|経営者の成長プロセス
2部:目的編
  • 2部-目的編|1章|経営の原理原則
  • 2部-目的編|2章|幸福の構造
  • 2部-目的編|3章|3Gマネジメント
3部:手段編
  • 3部-手段編|1章|経営脳の全体構造
  • 3部-手段編|2章|マインドセット
  • 3部-手段編|3章|フィジカル
  • 3部-手段編|4章|メンタル
  • 3部-手段編|5章|スキル
  • 3部-手段編|6章|センス
  • 3部-手段編|7章|マインドセットの8要素
  • 3部-手段編|8章|メンタルの8要素
  • 3部-手段編|9章|基礎スキルの8要素
  • 3部-手段編|10章|経営実務スキルの8要素
  • 3部-手段編|11章|センスの8要素
4部:実践編
  • 4部-実践編|1章|成長の本質論理
  • 4部-実践編|2章|成長の前提、自責思考
  • 4部-実践編|3章|自己投資の実践ロジック
  • 4部-実践編|4章|時間戦略の論理
1部-前提編
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この記事を書いた人

堀井弘三のアバター 堀井弘三

「もっといい会社」にするためには「もっといい経営者」になればええねん!が口ぐせ。
「経営脳:5つのレイヤー」で体系化した独自のマネジメントメソッドで、10名~200名規模の中小企業経営者を「リセット・コーチング」。
専門は「36カ月の経営計画」「管理会計」「チームビルディング・人事評価・業績連動型賞与制度」。
1999年に創業した自身の税理士事務所を2022年に事業承継し、現在はコーチ専業。
このサイト「Re!」はライフワーク。
「経営者のための思考のインフラ」としてお役に立てるように日々更新。

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