年に1度の大切な決算、着地したいところにソフトランディングするための「決算対策」が欠かせません。
「決算対策」といえば、中小企業では「黒字企業の節税対策」が一般的であり、ネットで検索すれば玉石混合、たくさんの「節税ノウハウ」が出てきます。
もちろん「節税」は大切ですが、かといって「節税だけに気を取られる」というのもいただけません。
「節税」は「決算対策」のひとつにすぎません。
中小企業の決算対策は、下記の3つの視点と、その組み合わせで取り組むのが「正解」です。
- 利益対策
想定通りの利益水準に着地できるか? - 決算書対策
誤解されないようにどんな「見た目」にするか? - 節税対策
資金が減らない「正しい方法」は何か?
本稿では、これらの視点をふまえ「中小企業の正しい決算対策」について整理します。
【利益対策】
想定してる利益に着地するか?
ひとつめの視点である「利益対策」は
「想定している利益水準に着地するか?」の確認です。
黒字であっても、赤字であっても、経営者は「この辺に着地するはず」という想定をしています。
着地点が
「その通り」なのか
「想定外」なのか、です。
もし調整が必要なのであれば決算日までに対策を講じます。
一般的には、下記のような対策がありますが、いずれも顧問税理士との綿密な打ち合わせを忘れないように!
利益を増やす対策
- 先行して損金処理が認められている支出を、あえて原則的な処理を行い、「前払費用」や「繰延資産」に計上して来期以降に繰り越す
- 含み益を持つ金融資産や固定資産などを売却する
- 固定資産の法定耐用年数が、実際より短い場合、実際に応じた年数に引き延ばす
- 少々荒っぽいですが、主に接待交際費などの経費の一部を「経営者の個人負担」とする
利益を圧縮する対策
- 来期以降に予定している支出で前倒しできるものは、今期中に処理する
- 不良在庫を処分する
- 固定資産を棚卸し「幽霊資産」が無いかを確認
- 含み損を持つ金融資産や固定資産などを売却する
- 一括損金が認められている前払家賃等の支出を検討する
- 回収見込みのない債権を償却する
【外観対策】
決算書の”見た目”を良くする
もうひとつの視点は、意外と盲点の「決算”書”対策」です。
簡単に言うと「見栄えの良い決算書(貸借対照表・損益計算書)」に着地するための対策です。
多くの中小企業は、決算書を金融機関に提出するので融資条件等に影響します。
また、信用調査会社の評価も気になるところです。
決算日までに行うこと
ひとつの例を挙げると「自己資本比率」を良くする対策です。
自己資本比率は「資産合計に対する自己資本の比率」です。
この比率を良くするためには?
- 分母:資産合計を圧縮する
- 分子:自己資本を増やす
というシンプルな分数計算で検討することができます。
決算日までに
「圧縮できる資産はないか?」
「自己資本を増やす方法はあるか?」
などを検討します。
- 余剰資金があるなら決算日までに前倒しで借入金を返済する
- 役員借入金や役員未払金があれば決算日までに精算する
- 在庫整理をしてミニマムまで圧縮する
- 除却できる固定資産を処理してしまう
・・・などがあります。
それぞれ、利益に対する影響額などを考慮しながら進めます。
逆に「決算日間際の借り入れ」は、資産合計が増え、自己資本比率は低下するので要注意です。
決算日のあとにできること
もうひとつ「決算書対策」として決算日が過ぎてから検討することがあります。
決算日を過ぎているので、もう数字を動かすことはできませんが「数字の表示場所」を動かすことは可能です。
例えば・・・
「販管費」に「臨時的な修繕費が500万円」計上されていたとしましょう。
これをそのまま「修繕費」として計上すれば「経常利益」は、その500万円分少なく計上されます。
しかし「臨時的な支出だから」という理由で「特別損失」に表示場所を移動すれば「経常利益」は「本来の業績」を表すことができます。
このように「表示する場所を変えることで見栄えがよくならないか?」の検討をすることも「決算書対策」のひとつです。

私は「決算書をスッピンで出すな!」とよく言います。
「少しくらいお化粧しようよ!」です。
もちろん「厚化粧」はダメですが(笑)。
【税金対策】
良い節税と悪い節税
多くの経営者が「節税するとトクをする!」と思っていますが、「節税」は目的ではなく、あくまでも「手段」です。
注意しなければならないのは、トクをするのは「良い節税」をしたときであって「悪い節税」をするとトクどころかソンしてします。
「できるだけ払いたくない=資金を温存したい」と思ってるのに、節税を間違うと会社の大切なキャッシュが減ってしまうことになります。
「節税してキャッシュが減ってしまった」では本末転倒です。
下記に典型的な例を紹介しておきます。
悪い節税
本末転倒!キャッシュが無くなる
利益:1,000万円の場合、税率を35%とすれば、納税額は350万円。
この納税を回避するために経費を1,000万円使えば、利益はゼロ=納税もゼロ。
350万円の節税ができました。
このケース、確かに350万円の納税は回避できましたが、トクをしたと思いますか?
この事例、利益に相当する資金1,000万円を経費として支出したので会社のキャッシュは空っぽです。
もし、この「悪い節税」をしなかったら650万円のキャッシュが残るのに、350万円の納税を回避するために利益の1,000万円を使い切った、ということです。
良い節税
将来必ずリターンがある
ただ、この話、単純に「ソンか?トクか?」という判断はできません。
それぞれについて「言い分・言い訳」を聞くと・・・
節税して「トクした」という経営者



1,000万円の追加経費は、広告宣伝や社員研修に使った。
つまり「将来への投資」として支出した経費だ。
近い将来「収益」としてリターンがあるから「ソン」なんてしてないよ!
節税して「ソンした」という経営者



もったいないことをしたよ・・・。
350万円の税金がゼロになるなら!と思って「食いまくって、呑みまくって」さらに「不必要な買い物」もしてしまった・・・。
まったくの「無駄遣い」を後悔してるよ・・・。
「経費を使ったら、利益が減って、税金は減る」、これは「事実」です。
しかし、もう一つの「事実」は「経費を使うからキャッシュは減る」ということです。
節税目的で支出するキャッシュが「いずれ帰ってくる投資」なら賛成ですが、ただの「無駄遣い」であれば本末転倒です。
将来、リターンがあるなら「良い節税」です。
リターンがないなら「そのまま納税」の方がキャッシュは温存できます。
【対策前提】
月次で “現在地” を知っておく
「決算対策」をして「理想とする着地点にソフトランディング」するためには「現在地」を正確に把握しておかなければなりません。
- 現在、ここにいる
- このまま進めば、あのあたりに着地する
- 着地点を修正するには・・・
というプロセスが「決算対策」であり、そのために「正確な月次決算」が欠かせないことは言うまでもありません。
「いま、どのあたりを飛んでるかわからない・・・」ってことでは、そもそも対策の打ちようがありません。
上手な決算対策のために正確な月次決算をすることは大前提です。
【要点整理】
3つの視点で総合判断
さて、どうでしょうか?
- 利益対策
- 見た目対策
- 節税対策
3つの視点を紹介しましたが、すでにお気づきのように「それぞれが関連している」ので、実務的には、これらの3つの視点をそれぞれ影響を検討しながら対策を進めていきます。
「銀行評価を高めるために、利益を多めに出せば、納税も増える」
「税金を減らしたいので、利益を圧縮すれば、銀行評価が落ちる」
そんなジレンマもありますよね?
顧問税理士とよく相談して進めてください。
お役に立ちますように!









