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3部-手段編|6章|センス

2026 1/03
2025年11月9日2026年1月3日
堀井弘三

本章では、第1章で提示した経営脳の5レイヤーのうち、最上層に位置する「Layer5:センス」について整理を行う。

以下、センスの階層構造、経営脳における位置づけ、中小企業経営における特性を明らかにする。

INDEX

1節:センスの定義と特性

センスとは、差を感じ取り、価値創造の起点となる感覚である。

経営におけるセンスは芸術的な感性ではなく、価値の差を捉え、それを成果に変換する実務的な能力である。

経営者のセンスは、次の3段階で機能する。

  • 感知:複数対象の差や違いを察知する
  • 判断:感知した差や違いを評価し、良否を見極める
  • 要件化:差をスキルで変換するための要件として具体化する

この3段階がセンスの領域である。

要件として具体化された「差」がスキルに引き渡され「実装・実現」が試される。

2節:経営脳における位置づけ

センスは、経営脳のLayer5に位置するが、他の要素との相互関係は次のとおりである。

(1)基盤依存性

経営者がセンスを充分発揮するには、下層の4レイヤーが最適化されていることを前提とする。

マインドセットが正しく整い、フィジカル・メンタルの状態が健全でなければ、そもそも「センスを発揮して差別化しよう」というモチベーションは生まれない。

また、スキルに課題があれば、センスを発揮しようとしても、期待通りの変換ができずに空回りしてしまう。

つまり、センスは下層4レイヤーを前提としてその機能を発揮することができる。

(2)支援機能

センスは、他の4レイヤーの支援機能として作用する。

センスの向上は、考え方の質や心身管理の手法を高める。

特にスキルとの関係においては、より効果的な発揮方法をスキルに指示・支援する機能である。

センスが高度化すると、それに伴いスキルの質も高度化が進む。

反対に、センスに課題がある場合は、いずれのレイヤーについても、その質を低下させてしまうことがある。

つまり、センスは経営脳全体の質を高めるための刺激機能といえる。

3節:組織への影響

第2部で示したように、オーナー型中小企業においては、経営者と3Gの距離が近い構造を持つ。

この構造的特性により、経営者のセンスは、良否に関わりなく直接的に組織に影響を及ぼす。

経営者は、自らの影響の大きさを自覚する必要がある。

(1)結果への即時反映

経営者のセンスの優劣は、経営の結果に与える影響が相対的に大きい。

センスの良さは、経営のあらゆる面において競争優位性の源泉となる。

センスに課題があると、凡庸さを通り越し、逆効果となることさえある。

(2)模倣学習による浸透

物理的・心理的距離が近いため、経営者が持つセンスや、そのための学習姿勢は、組織全体の能力開発や考動レベルに直接的に伝播する。

経営者自身のセンス向上への取り組みが、組織の学習文化を決定づける。

その結果、経営者のセンス水準が、組織にとっての標準値となる。

(3)自責力の伝播

経営者が自身のセンスを自らの責任として受け入れ、継続的な向上に取り組む姿勢は、組織全体の自己能力開発意識を強化する。

その結果、他責ではなく自己のセンス向上に責任を持つ企業文化を醸成する。

4節:外部環境との相互作用

経営者のセンスは、組織内部だけでなく、外部環境との関係においても重要な機能を持つ。

高いセンスを持つ経営者は、同様水準のセンスを持つ取引先や協力者との関係を構築しやすい。

また、それは持続的な信頼関係という無形の経営資源を形成する。

逆に、センスに課題がある経営者は、同様の課題を持つ取引先や協力者が集まりやすい。

これは、低レベルでの比較対象となることが多く、自己のセンスの客観的評価を誤ることになる。

5節:センスの8要素

センスは、複数の感覚要素が重なり合って形成される複合的な能力である。

その主要構成要素として、次の8つを提示する。

  • 好奇心:差や違いに対して積極的に興味や関心を向ける力
  • 移入力:他者の好き嫌いの評価軸を正確に感じ取る力
  • 観察力:対象の実態や変化を客観的かつ解像度高く捉える力
  • 緻密力:対象の細部にまでこだわり、構造を読み取る力
  • 比較力:複数の対象を比較し、その違いを具体的に抽出する力
  • 発想力:新しいアイデアや独自の視点を生み出す力
  • 構成力:感知した複数の差や違いを組合せて、より高い価値に変換する力
  • 執着力:安易な妥協をせず、求めている解に至る力

これらの8要素は相互に強化し合い、同時多発的に作用しながら「感知→判断→要件化」の過程を支える。

また、その相互作用には、機能が高まる正の作用と、崩れていく負の作用の両面がある。

  • 正の作用:各要素が他を促進し、センス全体が高度化する
  • 負の作用:一要素の課題が他に波及し、センス全体の感度を低下させる

これら8要素の詳細については、第11章で考察する。

6節:まとめ

本章では、経営脳の最上層に位置するLayer5:センスを整理した。

  • センスとは、差を感じ取り、価値創造の起点となる感覚である。
  • 経営におけるセンスは、価値の差を捉え、成功確率を高める形に変換する実務的な能力である。
  • センスは、感知・判断・要件化の三段階で機能する。
  • センスに特に影響すると思われる要素は、好奇心・移入力・観察力・緻密力・比較力・発想力・構成力・執着力の8つである。
  • 8要素は相互に強化し合い、同時多発的に作用する。
  • センスを充分発揮するには、下層の4レイヤーが最適化されていることを前提とする。
  • センスは、スキルをより有効な成果に変換する機能を提供し、スキルの発揮効果を最大化する。
  • センスは、最適化された状態だけでなく、その習得過程においても他の4レイヤーの質を向上させる。
  • センスは経営脳全体を循環的に活性化させる刺激機能でもある。
  • 中小企業では、経営者のセンスが考動の成果に即時反映され、競争優位性として顕在化する。
  • 経営者のセンス向上への取り組みが、模倣学習・標準設定・自責文化を通じて組織全体に伝播する。
  • センスは外部環境との関係において、環境選択効果と信頼関係構築効果をもたらす。
  • 正の作用でセンス全体が高度化し、負の作用でセンス全体の感度が低下する。

次章では、マインドセットの8要素について詳しく考察する。

【中小企業経営者論】もくじ

1部:前提編
  • 1部-前提編|1章|中小企業の特性と経営者論への帰結
  • 1部-前提編|2章|確率マネジメントの概念
  • 1部-前提編|3章|経営者の成長プロセス
2部:目的編
  • 2部-目的編|1章|経営の原理原則
  • 2部-目的編|2章|幸福の構造
  • 2部-目的編|3章|3Gマネジメント
3部:手段編
  • 3部-手段編|1章|経営脳の全体構造
  • 3部-手段編|2章|マインドセット
  • 3部-手段編|3章|フィジカル
  • 3部-手段編|4章|メンタル
  • 3部-手段編|5章|スキル
  • 3部-手段編|6章|センス
  • 3部-手段編|7章|マインドセットの8要素
  • 3部-手段編|8章|メンタルの8要素
  • 3部-手段編|9章|基礎スキルの8要素
  • 3部-手段編|10章|経営実務スキルの8要素
  • 3部-手段編|11章|センスの8要素
4部:実践編
  • 4部-実践編|1章|成長の本質論理
  • 4部-実践編|2章|成長の前提、自責思考
  • 4部-実践編|3章|自己投資の実践ロジック
  • 4部-実践編|4章|時間戦略の論理
3部-手段編
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この記事を書いた人

堀井弘三のアバター 堀井弘三

「もっといい会社」にするためには「もっといい経営者」になればええねん!が口ぐせ。
「経営脳:5つのレイヤー」で体系化した独自のマネジメントメソッドで、10名~200名規模の中小企業経営者を「リセット・コーチング」。
専門は「36カ月の経営計画」「管理会計」「チームビルディング・人事評価・業績連動型賞与制度」。
1999年に創業した自身の税理士事務所を2022年に事業承継し、現在はコーチ専業。
このサイト「Re!」はライフワーク。
「経営者のための思考のインフラ」としてお役に立てるように日々更新。

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